2年生エース対決、うれし涙と悔し涙 高校野球青森大会決勝

4回から登板、2失点ながら要所を締める投球で延長10回まで投げきった八学光星の主戦岡本
【八学光星-八工大一】10回を一人で投げ、八学光星打線の猛攻をしのぎ続けた八工大一の主戦金渕

 第105回全国高校野球選手権青森大会は最終日の27日、青森県弘前市のはるか夢球場で決勝を行い、八学光星が八工大一との延長十回タイブレークにもつれる激戦を3─2で制し、2年連続12回目の甲子園出場を決めた。八学光星は四回に青木、七回に西尾の適時打で2点を挙げた。同点に追いつかれて迎えた無死一、二塁から始まるタイブレークの延長十回は、1死後に捕逸で二、三塁とし、池田の左前打で勝ち越しに成功。八工大一の反撃を封じ、県内48チーム(連合1チーム含む)の頂点に立った。全国高校野球選手権は8月6日に阪神甲子園球場で開幕する。

無念降板「洗平の分まで」 燃えた岡本112球

 2年生エース同士の投げ合いを制し、勝利の瞬間から涙が止まらなかった。途中登板の主戦岡本は、2失点しながらも112球を熱投。チームを大舞台に導き、「(洗平)比呂、メンバーを外れた先輩、家族と、いろんな人の思いを背負って投げた。意地でも負けたくなかった」と言葉に力を込めた。
 テンポのいい投球で相手打線を封じていた先発洗平をアクシデントが襲ったのは二回の守備。一ゴロでベースカバーに入った際に左足を負傷した。三回は痛みをこらえて無失点に抑えたが、仲井監督から交代を告げられた。「マウンドに立ちたくて、悔しさで涙が出てしまった」と洗平。その様子を見ていた同学年の岡本が、燃えた。
 「お前の分まで頑張るから」。その約束を果たすべくマウンドに上がった四回。いきなり自己最速を1キロ更新する148キロを計測した。2度同点に追いつかれても、内外角に切れのある直球を投げ込んで踏ん張った。
 延長タイブレーク十回の1死満塁の大ピンチでは、八工大一がスクイズを敢行。「バントがあると思っていた」と、目の前に転がった打球を冷静に処理し、本塁で封殺した。最後の打者を直球で内野ゴロに仕留めると、歓喜の輪の中心で雄たけびを上げ、涙を流した。
 昨年の甲子園は、好投する洗平をスタンドから見守った。「小さい時から憧れた夢の甲子園。今回はありのままの自分を最大限出したい」と岡本。母から「泣き虫」と言われる心優しいエースが、うれし涙を拭った。

「先輩を勝たせたかった」 金渕、雪辱誓う

 試合終了とともに、2年生エースは両膝に手を突き、泣き崩れた。「先輩を勝たせてあげられなかった」。10回158球を投げ抜いた、八工大一の金渕の力投は報われなかった。
 炎天下、最速143キロの直球とスライダーを効果的に使い、的を絞らせなかった。タイブレークに突入した延長十回1死二、三塁。やや甘く入ったインコースのスライダーを打たれた。「球は走っていたと思っていたのに…」と悔しさをにじませた。
 26日の練習前、長谷川監督に「決勝で投げさせてください」と自ら先発を志願した。準決勝までの3試合で321球を投げ、既に疲労はたまっていたが、決勝に懸ける思いは強かった。監督からは「歴史の新しい一ページを開いてくれ」とマウンドを託された。
 このチームになってから「甲子園を決めてくれ」「お前しかいない」と先輩から言われ続け、エースとしての自覚が徐々に強くなった。冬場のウエートトレーニングで筋力を強化し、ベンチプレスは140キロを持ち上げるまでになった。その結果、球速は昨夏に比べ、5キロほど増すなど着実に成長を遂げた。
 試合にこそ負けたものの、強打の八学光星を相手に8奪三振3失点と粘投した。金渕は、八学光星の2年生投手の洗平や岡本の名前を挙げ「次の夏もまた投げ合いたい。それまでに、どこのチームにも負けない投手になりたい」と雪辱を誓った。

© 株式会社東奥日報社