社説:人口大幅減 少子化止める処方箋を

 日本人の減少幅が、最大を更新した。

 総務省が公表した住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、今年1月1日時点の日本の総人口は外国人を含めて約1億2541万人だった。

 減少幅は、前年比で約51万人である。それが、日本人に限ると80万人以上に及び、1968年の調査開始以来の人数となった。

 前年増加していた沖縄が減少に転じ、47都道府県の全てでマイナスとなったのも初めてである。

 出生数が過去最少の約77万人だったのに対し、死亡数はこれを大きく上回り、最多の約156万人に達した。

 まさに、深刻な少子化を反映した結果といえよう。

 総人口を、都道府県別に見ていくと、減少率は秋田の1.65%が最も高く、青森の1.41、岩手の1.39が続く。

 地方ほど、人口の減少傾向が顕著なようだ。地域交通などのインフラ廃止や、地場産業の担い手不足といった弊害が、さらに広がることが懸念される。

 三大都市圏であっても、関西圏(京都、大阪、兵庫、奈良)は約6万5千人、名古屋圏(岐阜、愛知、三重)は約4万3千人減っている。京都市の日本人減少数は1万人を超え、3年連続で全国最多となった。

 ところが、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)だけは、約3万8千人増えて、2年ぶりのプラスになった。日本人が約7万2千人減る一方で、外国人が約11万人増加していた。

 新型コロナウイルス流行時の入国制限が緩和され、留学生や技能実習生の多くが戻ってきたのだろう。人口の減少を緩やかなものにするには、今以上に外国人と共存していかねばならないようだ。

 コロナ禍を契機に、中高年の地方移住は活発になったものの、18~24歳の就職期の若者は地方から流出し続けている、と分析する研究者がいる。

 特に、情報通信業など性差の影響の少ない成長分野にある企業は東京圏に多くあるため、女性が地方から出ていく傾向が強まっているという。女性の都市集中は、未婚化とともに少子化を加速させる一因ともされる。

 政府の取り組む「次元の異なる少子化対策」は、児童手当の拡充など、従来の施策の延長線上にあるものが多い。地方に暮らす若者や女性の所得向上につながるような新たな処方箋が求められる。

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