中古車輸出ピンチ 県内業者から悲鳴 対ロシア規制対象拡大

ロシア向けに輸出される中古車が並ぶ富山新港=射水市八幡町

  ●全国の半数、富山から

 政府は28日、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加制裁として、自動車などの輸出規制対象を拡大する改正政令を閣議決定した。一部の小型車を除き、ほとんどの中古車が制限されるため、ロシア向け中古車輸出の国内半数以上を占める伏木富山港を持つ富山県内の輸出、販売業者への影響は大きく、担当者から悲鳴が上がっている。

 経済産業省は昨年4月から、600万円を超える高級車などぜいたく品を禁輸。今回はロシアの産業基盤強化を抑えるため鉄鋼や繊維なども加え、750品目程度を対象にする。既に規制を強化している米国や欧州連合(EU)に足並みをそろえる。施行は8月9日。

 自動車で新たに対象に加わるのは、排気量1900㏄超のガソリン車、ディーゼルエンジン車のほか、全てのハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)。

 ウクライナ侵攻後、自動車各社は新車のロシア向け輸出を制限しており、ロシアでは日本から輸入した中古車の人気が高い。昨年にロシアへ輸出された中古車は全国で20万4868台で、このうち富山県から52.9%の10万8281台が送り込まれた。金額ベースでは56.3%を占めた。

 輸出規制を受け、日本有数のロシア向け中古車輸出の拠点となっている伏木富山港を利用する業者からは悲鳴が上がっている。

 射水市本江後新の「SV-ALLIANCE」は週に千台の中古車をロシアに送る。ロシア人経営者のプシン・セルゲイ代表(50)は「制裁の影響はとても大きい」と話し、在庫車両を減らすため、輸出のペースを上げているとした。

 ロシアではHVやPHVが人気なため大量に取り扱っていたが、制裁施行後は輸出量が現在の1割以下の月300台程度に激減すると予想する。セルゲイ代表は「規制が長期間にわたると、スタッフや保管用の駐車場を減らさざるを得ない」と話した。

 射水市西高木の「フレンドシップモーターカー」のモハマド・アリ代表(57)=パキスタン出身=は、中古車販売業者が国内への販売にシフトし、価格が下落する可能性を指摘した。

 高岡市の中古車販売業の担当者は、国内での中古車の流通量が増えることを懸念し「中古車が売れにくくなる」と不安がった。

 中古車輸出ビジネスに詳しい富山高専の岡本勝規教授(人文地理学)は、昨年の輸出台数が突出して多かったとした上で「今回の制裁で輸出台数、金額が半分程度まで急落するだろう」と見込み、県内の業者へのダメージは大きいとした。

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