アジフライは醤油派? それともソース派?
わたしは4歳の頃から断固醤油派。っていうか、醤油でしか食べたことがない。
タルタルソースをつけてくる店があるけど、そんなものをつけて食べたいなどと金輪際思ったことがない。
そんな死ぬまで断固醤油派が、九段南の店でアジフライを食べた瞬間、改宗しました。
『トーキョーアジフライ』での出来事である。
アジフライ専門店でおいしい食べ方を教えてもらった
トーキョーアジフライというのは、アジフライ定食しか出していないアジフライ専門店。
11時の開店前から長蛇の列(らしい)。売り切れ次第閉店のため15時の閉店時間まで営業したことがないというぐらい繁盛店。
それはさておき。
各テーブルやカウンターには醤油の他、九州の甘い醤油、ウスターソース、塩、今月の薬味がおかれている。
そしてもうひとつ。なぜか粉チーズも並んでいた。
醤油だけあれば十分だと思っていたが、ここにあった調味料をあれこれ使った結果、改宗してしまったのだ。
アジフライが大好きで、死ぬまで醤油派だった父親が、息子が醤油派をやめたことを知ったら逆鱗にふれるに違いない。
けれど、醤油ではない、別の食べ方が感動的なおいしさだった。
「うまい」と大声を出してしまったのだ。
アジフライを食べて大声をあげるとは夢にも思わなかった。
そもそもこの店のアジフライは、これまで食べたことがない食感であり、味わいだった。
たとえば、先日肉屋でアジフライを頼んだら冷凍庫からアジフライを出してきた。
注文後揚げてくれたのだが、褐色というよりもやや焦げたような色。
しかもアジフライにはほとんど水分がなく、ややパサパサ。
ところが、トーキョーアジフライのアジフライは美しい黄金色。
ほどよく水分を含んでいてジューシーで、フワフワ。
同じアジフライなのに、なぜこれほど違いが生じるのか。
ご主人の宮木聡司さんに尋ねた。
塩をしてひと晩寝かせたアジを1分弱しか揚げないからフワフワ
「うちでは長崎県松浦港で水揚げされたアジを使っています。そのアジを営業終了後三枚におろし、塩をふったものを冷蔵庫でひと晩寝かせたものを揚げています」
塩をすることで余分な水分が抜ける。しかも熟成させるため、うま味が増すというのだ。
「これに小麦粉と溶き卵とパン粉をつけ、170度の油で揚げます。揚げ時間は1分弱。揚げすぎないため水分をほどよく含み、フワフワなんです」
生のアジを使っているがゆえに揚げ時間は1分弱。
揚げすぎないからこそ水分含有量も多く、フワフワなんだろうなあ、きっと。
揚げたてのアジフライがご飯、味噌汁、醤油漬けの卵黄、ワサビがのった大根おろし、漬物と一緒に届けられる。
アジフライには、キャベツとタルタルソースと揚げたアジの中骨が盛られている。
先述したように各テーブルやカウンターには、いろいろな調味料がおかれている。
客は思いも思いに好きな調味料でアジフライを賞味すればいいのだが、宮木さんオススメの食べ方を教えてもらった。
「アジフライに大根おろしとワサビをのせて醤油をかけて食べてください」
醤油だけでなく、大根おろし+ワサビでさっぱりと食べられた。
「僕はタルタルソースとウスターソースが好きです。お客様もタルタルソース&ウスターソース派が多いですね」
タルタルソースは毎日店で作っているそうだ。
タルタルソース&ウスターソースの合せ技もなかなか。
取材に伺った6月の薬味は青唐辛子の醤油漬け。ピリ辛でアジフライの味がしまった。
断固醤油派としては、やっぱり醤油だよなと思いつつ、ご飯をお代わり。
この店ではご飯をお代わりできるのだ。
「10杯食べた方もいます」
醤油漬けの卵黄と粉チーズで食べるアジフライに開眼
さて、ここで問題の粉チーズである。
洋食屋でもないのになぜ粉チーズがあるのか。ナポリタンに粉チーズなら理解できるけど。
「ご飯にアジフライをのせて、その上に醤油漬けの卵黄をそえ、粉チーズをかけてください」
アジフライに粉チーズ? なんだかよくわからないけど、試してみよう。
「粉チーズの量はこれぐらいでいいですか」
「チーズが嫌いでなければ、もっとたくさんかけて」
ドカドカとかけたところで、アジフライをひと口。
う、うまい。思わず叫んでしまった。
アジフライを食べて大声を出したのは初めて。
松田優作扮するジーパン刑事じゃないけど、なんじゃこりゃ~なアジフライでした。
長年食べてきたアジフライとはまったく違う味。びっくり。
醤油をかけたアジフライでは絶対に体験できない世界。新しい天体を発見した気分。
醤油漬けの卵黄と粉チーズ。こんな組み合わせがあったんだ!
「アジフライはクセがないのでなにをかけても合うんです。いろいろな調味料を用意しているので、いろいろな発見ができる愉しさがあります。おいしい料理を用意させていただくので、あとはお客さんが仕上げてください」
感動的なアジフライは並んででも食べる価値あり!
自宅でも生のアジでアジフライを作ることがある。揚げ時間は1分弱とおぼえておこう。
そして、もうひとつ大切なことを学んだ。
アジフライは醤油だけにあらず。
醤油漬けの卵黄と粉チーズで食べるアジフライは、おいしいを超えた感動の味。
試す価値があるゾ。
並ぶと思うけど、挑戦してみて。
【トーキョーアジフライ】店舗概要
住所/東京都千代田区九段南3-8-10 B1
電話/03-6272-4666
営業時間/11:00~15:00(LO14:30)売れ切れ次第終了
定休日/日曜
(うまいめし/ 中島 茂信)