祖父母の思い出詰まった日本家屋をカフェに 元スタバ社員の女性「憩いの場に」 こだわりの豆を焙煎、軽食も

祖父母の家を改装し、カフェを開いた門野亜純さん=丹波市青垣町佐治

 日本家屋の雰囲気を生かしたカフェ「ajun coffee&yums(アジュン コーヒーアンドヤムズ)」が、兵庫県丹波市青垣町佐治にオープンした。京都府福知山市の門野亜純(あずみ)さん(40)が、祖父母の住んでいた家を改装。コーヒーチェーン大手で長年培った経験と技術を生かし、住民らが憩い、交流できる空間を提供する。(秋山亮太)

 長屋門が迎える店は、門の奥に敷地が広がり、瓦屋根の店舗や開放的な庭、犬が遊べる芝生のコーナーがある。店内は畳敷きの2部屋と、カウンター席のある洋風の1室がカフェスペースになっている。年季の入った柱や天井、木製のインテリアなど、内装には「実家」のような落ち着きや風格がにじむ。

 門野さんは幼い頃からこの家にはよく遊びに来ていたといい、応接間と茶の間だった畳敷きの2部屋について「年末には私たちが紅白。おばあちゃんは隣の部屋でチャンバラを見てたなあ」と回想する。

 祖父母が亡くなり、住む人がいなくなった家を「なんとか維持したい」と活用を検討。学生時代から計約20年、スターバックスコーヒージャパンで社員などを務め、自分の店を持つ夢もあったことから、交流の場として地域貢献もできるカフェを開くことにした。

 門野さんは、スタバの中でも難関試験をクリアした者だけが着られる「ブラックエプロン」のスタッフだった。何度も試験に合格したことを表す「星」も持っていたコーヒーのスペシャリストで、自身の店でも培った知識や経験を生かす。

 風味だけでなく、栽培管理や生産体制などにもこだわってコーヒー豆を厳選。飲みやすい豆から、特徴のある豆まで用意し、店内で焙煎(ばいせん)する。フルーツサンドやクロックムッシュ、マフィンなど軽食も人気だ。きび砂糖や米油を使ったり、塩分をできる限り抑えたり。「いつも食べてくれるおばあちゃんたちに元気でいてほしいから」と健康も意識する。

 味や品質を大切にしながら、価格は「子どもからお年寄りまで、日常使いしてもらいたい」と家計目線を大切にした。コーヒー400円、カフェラテ420円。小さな子ども向けのドリンクは120円。3人を育てる親として、「子育ての息抜きができる場所でもありたい」と話す。

 ゆったりとした時間には、隣り合っておしゃべりを楽しむなど、住民との交流も深める。開業後、祖父が仕事で関わった人が「懐かしい」と訪れたこともあった。地域の温かみに触れ、祖父母が暮らしたまちが、「自分が生きる地域」にもなっていると感じ始めたという門野さん。受け継いだ家を「青垣の良さに触れられる場所にしていきたい」と話した。

 営業は月、火、金曜が午前10時半~午後4時。土曜は午前10時半~午後3時。アジュンTEL080.1435.3747

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