有力情報、依然得られず...地域住民「記憶薄れる」 日光・仏人女性行方不明5年

ベロンさんが宿泊したホテル周辺には、民家や宿泊施設が軒を連ねる。外国人旅行客の姿もあった=27日午後、日光市内

 2018年7月、観光で日光市を訪れたフランス国籍、教員補助のベロン・ティフェヌ・マリー・アリックスさん(41)が行方不明となり、29日で丸5年となる。捜査関係者への取材で、行方不明になった当日、携帯電話の衛星利用測位システム(GPS)の位置情報から、宿泊施設を外出した後、近くの大谷川との間を30分ほど転々としていたことが分かった。ただ、詳しい足取りは分からず、延べ約9千人を投入した県警の捜査、捜索でも有力な手掛かりは得られていない。「5年もたったのか」。地元住民からは安否を心配しつつ、風化を懸念する声もある。

 27日午前。ベロンさんが滞在した同市内の宿泊施設周辺には、多くの外国人観光客の姿があった。ホテルや民家が並び、観光客の散策コースになっている。歩いて10分前後で日光東照宮や憾満ヶ淵(かんまんがふち)などの観光地にも行ける場所だ。

 ベロンさんは18年7月27日に来日し、翌28日から同市内で2泊する予定だった。一泊した29日午前10時ごろ、ホテルから1人で外出する姿の目撃を最後に、行方が分からなくなった。パスポートやスーツケースはホテルに残されていた。

 事件と事故の両面で捜査している県警は、今年6月末までに延べ約9千人の捜査員を動員し、大谷川や鳴虫山などを捜索。月1回の捜索を続けているが、有力な情報は得られていない。川に落ちて流されたり、山で遭難したりした可能性も視野に入れている。

 「もう5年もたったのか」。宿泊施設の近くの90代男性はしみじみと語る。近隣住民はベロンさんの安否を心配している。一方、「新たな情報がないと話題に上がらず、記憶も薄れていってしまうのでは」と風化への懸念を口にした。

 JR日光駅と東武日光駅の周辺の複数店舗では、ベロンさんの家族が作成した情報提供を求めるチラシが張られている。ある女性店主は「フランスにいる家族を思うとかわいそう。5年経過したが、何かしらの進展があってほしい」と話した。情報提供は日光署0288.53.0110。

ベロンさんの家族が作成したチラシ(右)を張り、情報提供を呼びかける店舗=27日午後、日光市内

© 株式会社下野新聞社