100年先にも読み継がれる防災絵本を 神戸の「ひとぼう」提唱、命を守る新たな視点に

「防災100年えほんガーデン」の催しで、子どもたちに絵本を読み聞かせる古賀涼子さん=人と防災未来センター

 阪神・淡路大震災の記憶と教訓を伝える「人と防災未来センター」(神戸市中央区脇浜海岸通1)などが、絵本による語り継ぎを進めている。公募した作品の中から絵本化し、災害から命を守るために大切なことを国内外に発信する。河田恵昭センター長(77)は「親から子へ、命の大切さを読み聞かせてほしい」と願いを込める。 (上田勇紀)

 2020年1月、神戸市で開かれた「世界災害語り継ぎフォーラム」の壇上で、河田氏は防災教育のための絵本作りを提案。同センターが事務局を務め、兵庫県内131団体・個人が入る「ひょうご安全の日推進県民会議」(会長=斎藤元彦知事)などによる実行委員会が立ち上がり、22年11月から23年1月、絵本の原案となる文章作品を初公募した。

 

原案を公募、隔年で出版へ

 全国から148作品が集まり、俳優の竹下景子さんら5人の委員会が入選作10点を選出。現在、作家を募って、入選作から数点を23年度中に絵本化する準備を進めている。

 事業名は「防災100年えほんプロジェクト」。乳幼児や児童への教育効果に着目し、絵と物語を通じ、大人になっても記憶に残る作品を生み出す。100年先にも、災害から生き延びる防災の知恵が受け継がれることが目標だ。

 「災害は放っておいたら風化してしまう。命を守るために新たな視点が必要と感じた」と河田氏。防災や危機管理の第一人者として、近い将来起こるとされる南海トラフ巨大地震への備えを呼びかけてきた立場から、一過性に終わらない取り組みが重要と指摘する。

 このため原案の公募は毎年実施し、2年を1サイクルとして順次、絵本化していく。製本して出版するほか、英語などに翻訳してインターネット上でも公開する予定だ。事業費は県の交付金や企業の協賛金などを充てる。

 

年齢や国を問わず体験共有

 プロジェクトの一環で、7月22日には人と防災未来センター西館2階に、全国の災害・防災関連絵本約160冊を集めた「防災100年えほんガーデン」を開設した。8月27日まで、阪神・淡路や東日本大震災などを基にした多様な絵本を読むことができる。

 選書を担当し、「防災絵本専門士」の肩書で活動するフリーアナウンサー古賀涼子さん(44)は「絵本は年齢や性別、国を問わず体験を共有できる」と指摘。「時代を超えて読み続けられる防災絵本が、神戸から広がってほしい」と期待する。

 絵本の物語原案の第2回公募は9月1日から11月5日。同センターのホームページから専用サイトに移り、詳細を確認できる。同センター運営課TEL078.262.5502

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