LRT利用促進、目玉は「トトラ」  運賃負担軽減でお得感も 発進LRT④

トトラを手にする宇都宮市清原中の1年生。出前講座ではLRT利用が呼びかけられた=6月7日

 真新しい交通系ICカード「totra(トトラ)」を手にした中学生から、矢継ぎ早に質問が飛ぶ。「現金チャージの方法は」「ポイントはどうたまるの」

 6月7日、宇都宮市清原中での出前講座。JR東日本のSuica(スイカ)と同じ機能を持つトトラについて、講師が分かりやすく説明した。運転免許取得前の若い世代に、公共交通を利用する意識を身に付けてもらう狙いだ。

 次世代型路面電車(LRT)の利用促進策として、市と芳賀町はトトラの活用に力を入れる。市は2022、23年度、市内の中学生計約1万8500人に配布。町も22年度、全約5800世帯に配った。

 トトラは路線バス、デマンドタクシーなどでも使える。利用ごとに2%のポイントが付与され、店舗での買い物も可能だ。市交通政策課の担当者は「トトラ1枚でどこまでも行ける」とアピールした。

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 車社会の本県でLRTを利用してもらおうと、市はさまざまな知恵を絞る。

 トトラ同様、目玉となるのが運賃の負担軽減だ。市内ならバス1回の利用が最大400円。LRTなどと組み合わせても、市内全域を500円以内で移動できるようにする。「市民に最初に響くのがお得感」と市担当者。こうした利用促進策に23年度は約5千万円を投じる。

 LRTの平石停留場に直結し、26年完成を目指す市東部総合公園。スケートボード、自転車BMX、3人制バスケットボールなどの施設を備え、国際大会や大規模イベントにも対応できるようにする。市東部エリアの観光振興にも着手。通勤通学以外の日常利用を増やす仕掛けづくりが続く。

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 徒歩、自転車、タクシー、バス、鉄道、そしてLRT。さまざまな移動手段を上手に組み合わせてもらうよう、市民に働きかける交通施策が「モビリティ・マネジメント」(MM)だ。

 市はLRT開業を契機に、高齢者や高校生のいる沿線約1万世帯と通勤通学者約3万人を対象にMMを本格化させる。公共交通を活用する「マイ時刻表」、健康増進にもつながる「交通診断カルテ」。公共交通の利便性や意義を実感してもらう取り組みで、行動変容を促していく。

 目指すのは、車に過度に依存しない社会の実現。市担当者は力を込める。「公共交通利用の定着に向け、LRTへの関心が高まる今こそ、最大の好機だ」

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