美術館の新たな魅力を発信しようと、山形市の山形美術館で29日、初めてナイトミュージアムが行われた。開催中の「遠藤彰子展 巨大画で挑む生命の叙事詩」について、ナビゲーター役の黒木あるじさん=同市=が怪談作家ならではの視点で紹介し、怖い話を披露した。参加者は薄暗い中、昼とは違って見える芸術を楽しんでいた。
県内外の小学生から大人まで18人が参加した。参加者はそれぞれ懐中電灯を持ち、学芸員の案内の下、普段は乗ることのできない作品搬入用のエレベーターで展示会場の2階へ。黒木さんは懐中電灯で絵の一部分を照らしながら、悪魔のような生き物や不穏に感じる描写などを説明した。
横7メートルを超える大作「鐘」について、黒木さんは「円卓を囲んでごちそうに講じる人がいる一方、飢えて草を食べている子どもがいる。森の木陰には首を絞めているように見える人もおり、人間の醜さが出ている。見るたびに新たな発見がある」とし、「生命の力強さと不穏なものといった二つの対比が描かれているのが、遠藤作品の魔力というか魅力」と伝えた。最後に絵にまつわる実話怪談を語り、「背後にご注意を」と締めくくった。
山形市七日町1丁目、会社員奥山吉貴(よしたか)さん(40)は「夜の美術館は、昼とは雰囲気が異なりよかった。スケールが大きく、子どもと一緒に来ても楽しめる」、娘の山形一小4年雫玖(しずく)さん(10)は「懐中電灯で照らして見ると、すごく怖かった。印象に残っているのはワニの絵。昼にまた見に来たい」とそれぞれ話した。
同展は山形新聞、山形放送の8大事業。洋画家遠藤さんの油彩画や彫刻など約80点を展示している。8月27日まで。