蔵王樹氷、未来につなぐ 本社8大事業「みどりの学び」夏の教室

アオモリトドマツの稚樹を掘り出し、移植するため袋に入れる親子。青空から陽光が差し緑色が映えた=ユートピアゲレンデ付近

 山形新聞、山形放送の8大事業の一つ「第3回みどりの学び 蔵王樹氷再生プロジェクト」の夏の教室が29日、山形市の蔵王山で開かれた。県内の親子11組24人が参加し、樹氷を形成するアオモリトドマツの枯死問題に理解を深めながら、稚樹の採取や試験移植を体験した。

 蔵王ロープウェイ蔵王山麓駅前で開会式が行われ、主催者代表の寒河江浩二山形新聞会長・主筆(山形新聞グループ経営会議議長)が「アオモリトドマツについて学んだことを友達や家族に伝え、山形の、日本の、世界の緑を大切にする気持ちを育み、継承してほしい」と呼びかけた。

 来賓の平山雅之副知事が「みんなで樹氷を守っていく気持ちを次の世代につなげてもらいたい」、益田健太林野庁山形森林管理署長が「樹氷再生を目指し息の長い取り組みを進めていく上で、皆さんの参加は心強い」とあいさつした。

 山形新聞の「循環型(クローズド・ループ)古紙回収」に連携して取り組む日本製紙の馬城(まのしろ)文雄会長は、アオモリトドマツの苗木生産に関する自社の研究を紹介し「樹氷再生のプロジェクトに少しでも役立ちたい」と述べた。

 参加者代表の山形市金井小6年田中舞子(まこ)さん(12)が「アオモリトドマツを見て、触れて、聞いて学び、大好きな蔵王のために自分にできることを見つけたい」と決意表明した。

 参加者は蔵王山麓駅からユートピアゲレンデに移動し、標高約1400メートル地点で自生するアオモリトドマツの稚樹を採取した。高山植物が群生する湿原「いろは沼」を散策後、地蔵山頂駅そばの試験植栽地に稚樹を植え、樹氷再生への願いを強くした。

 「みどりの学び 蔵王樹氷再生プロジェクト」はSDGs運動の一環として、山形森林管理署と県、やまがた森林(もり)と緑の推進機構の協力を得て2021年にスタートした。これまでは稚樹探し、移植体験を夏と秋に分けて行っていたが、今年から植栽規模を拡大し、夏、秋ともに約10組の家族が1日で稚樹探しから移植まで取り組む。秋の教室は9月30日に開く。

 東北森林管理局の調査によると、アオモリトドマツは虫の食害で蔵王山全体の約15%に当たる約2万3千本が枯れた。特に地蔵山頂駅周辺は被害が深刻で、約16ヘクタールにわたり枯死木のみとなっている。

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