最高峰バックに、湿原を行く 絶景-吾妻連峰・夏山縦走隊ルポ(第2日)

主稜線上の豊かな湿原の中を進む。後方には西吾妻山(左奥)を望む=米沢市

 吾妻連峰縦走2日目の31日、山形新聞の登山パーティーは米沢市の天元台高原を出発した。明道沢(みょうどうさわ)コースを経て、大平温泉から主稜線(りょうせん)へと登り返し、弥兵衛平(やへえだいら)小屋(明月荘)に到着した。

 下りと登りを繰り返す長丁場の行程となり、吾妻連峰のさまざまな表情を垣間見た。標高の低いエリアでは沢水の冷涼さに癒やされ、再び戻った主稜線上では、豊かな湿原と最高峰の西吾妻山(2035メートル)を楽しんだ。

 一行は縦走3日目の1日、弥兵衛平小屋から東大巓(ひがしだいてん)(1928メートル)、谷地平、浄土平を経て、吾妻小舎(ごや)を目指す。

マイナーな道、探り探り  吾妻連峰縦走2日目の31日、米沢市の天元台高原を出発した山形新聞の登山パーティーは、一般的な登山地図では紹介されていないマイナーなルートを選び、主稜線(りょうせん)へと登り返した。秘湯の道をはじめ野趣あふれる山行の先に、高山が醸す別天地が待っていた。

 早朝にペンションを出発したが、生い茂るやぶで入山口が見つけられず、2手に分かれながら登山道を探った。道中では明道滝を眼下に拝みつつ、ようやく登山道を見つけ出したところで、山岳ガイドの吉田岳さん(54)=小国町=が「嫌な知らせが」と切り出し「今、クマのような影が見えた」。そこからの行程は携行するクマ鈴を打ち鳴らすのはもちろんのこと、必要以上に全員で大声を掛け合うにぎやかな道中となった。

 ヤグルマソウなどが生い茂るやぶを抜け、林野庁の「森の巨人たち100選」に選ばれる、樹齢推定500年以上の「吾妻のミズナラ」などを経て幸いにもクマのテリトリーを脱した。下りた谷には、最上川源流にある一軒宿・大平温泉滝見屋があった。渓流沿いの湯が人気だが、昨年6、8月の豪雨などで施設が破損し、打撃を受けた宿でもある。復興への歩みを進める中、連絡もなしに立ち寄った一行を、宿の関係者は丁寧にもてなしてくれた。この日は湯場の清掃のため休業日。関係者から「入っていきますか」と誘われたが、スケジュールの都合上、「秘湯」に後ろ髪を引かれながら先へと進んだ。

 東側への登山道へとショートカットする道を経て主稜線に登り返した。汗にまみれる中、アブと蚊にまとわりつかれる時間がひたすら続いたが、稜線直下の樹林帯を抜けた瞬間に太陽のまぶしい光が注ぎ、アブと蚊は消えた。代わりにアキアカネと鳥のさえずりが出迎える中、主稜線上の湿地帯をこの上なく心地良く歩いた。

明道沢コースではヤグルマソウなどが葉を広げ、足元に注意を払いながら進んだ
本県を代表する秘湯の一つ、大平温泉を経由する。渓流沿いの温泉に思いを致す
明道沢を渡る。沢沿いでは涼しい風が吹いた=米沢市
昼食のサンドイッチを用意する。川沿いで涼を感じつつ、エネルギーを補給した

© 株式会社山形新聞社