世界が注目 宮島の朝のおもてなし G7サミットで6月来島者が過去最高を更新 広島県産食材を8割使用した朝食スタート

G7サミットから約2か月。首脳たちが訪れた宮島は、6月の来島者が過去最多を記録しました。

観光客たち
「首脳と同じ地を踏めて、うれしく思っています」
「海が好き」
「すばらしい。神社が幻想的」

このチャンスを生かそうと、地元の食材にこだわった朝食の提供を始めたホテルがあります。

錦水館 武内智弘 社長
「広島の食材を希望されるお客さまもだんだん増えてきたので、このたび地産地消に力を入れようと思いました」

世界から注目が集まる宮島のホテルは、訪れる人をどのように迎えているのでしょうか。4年ぶりに新型コロナの規制のない夏休みシーズンを迎えています。朝食を通し広島を発信しようとするホテルの取り組みを取材しました。

牡蠣スープのフォーに宮島はちみつをかけたフレンチトースト。そして、いろとりどりの野菜。宮島桟橋の目の前にあるホテル「宮島別荘」の朝食メニューです。

中根夕希 キャスター
「リニューアルされる朝食ビュッフェ。その8割が広島県産品が使われているということです」

宮島別荘では8月1日から朝食のメニューが新しくなりました。もともと朝食にはこだわっていましたが、1日の始まりを健康的に過ごせるようにとリニューアルして、県産の食材の使用量を5割から8割に増やしました。ホテル宮島別荘を運営する「錦水館」の 武内智弘 社長は、地元の食材にこだわる理由をこう話します。

錦水館 武内智弘 社長
「G7サミットが広島で行われた後に、国内だけじゃなくて海外のお客さまがたくさんお越しになる中で広島の食材を希望されるお客さまもだんだん増えてきたので、このたび地産地消に力を入れようと思いました」

サミット翌月の6月に宮島を訪れた観光客などの来島者数は、統計を取り始めた1964年以降、最も多い31万3426人でした。これまでで最多だったコロナ禍前の2019年よりも1万人あまり上回っていて、注目度の高さがうかがえます。

ホテル宮島別荘の宿泊者数も、6月はこれまで最多だった2019年の120パーセントに達しました。ただ、多くの宿泊者を迎えるためには安定した量の県産食材を仕入れる必要があります。武内社長は、生産者と関係づくりに苦労したそうです。

錦水館 武内智弘 社長
「小さい農家から大きい農家までありますので、つながりをどうやってつくるのか、当初はすごく農家に行ったり、おいしい食材を探したりしてご縁をいただいた」

宮島別荘特製のレモネード。使われているハーブのほか、朝食に出される野菜を宮島で作る「中岡農園」の山本千内さんです。農作物を同じ島にあるホテルで提供されることで、「訪れた人がその土地を身体で体験できる」と期待しています。

中岡農園 山本千内 さん
「(肥料に)宮島のしゃもじの木くずだったりとか、打ち上がる海藻だったりとか、そういうものを中心に使っているので。身体に染みこんでいって、どこかで日本が本当によかったなっていう、一時的なものではなくてよかったっていうのが、じっくり続いていくみたいなことになったら。わたしたちの野菜は派手ではない野菜なので」

中岡農園の梅干しを添えた、小松菜のおひたしです。

中根夕希 キャスター
「うーん、シャッキシャキです。おいしいですね」

小松菜は、広島市安佐南区沼田町戸山地区の「ルンビニ農園」で作られています。16年前に農園を立ち上げた 今田典彦 さんです。20代から70代の25人の従業員は、音楽好きの今田さんがデザインしたおそろいのユニホームを着て作業しています。

ルンビニ農園の小松菜の年間の生産量は約240トンで県内トップクラス。地元のスーパーやデパート・ホテルはもちろん、東京の高級スーパーにも出荷されています。

ルンビニ農園 今田典彦 代表
「お米をつくったときに出るもみ殻、これを炭にした状態のもの、くん炭って呼ぶんですけど、このくん炭をしっかりと入れて土作りをしています」

くん炭を使うことで土はふかふかになり、きれいな水と寒暖差のある戸山地区の気候で野菜に甘みとコクが出るそうです。ルンビニ農園は、約10年前から錦水館グループと取り引きがあり、コロナ禍でホテルが休業した際にはシェフなどのホテル従業員の雇用を一時的に受け入れました。

ルンビニ農園 今田典彦 代表
「今まで錦水館さんには、たいへんお世話になっていて、いつもうちの野菜をしっかり買っていただいてですね。恩返しの意味も込めて、がんばってできるだけたくさんの人をここで一時雇用できるよう…」

今田さんは、この経験を経て生産者とホテルの関係性が密になったと話します。

ルンビニ農園 今田典彦 代表
「作り手のわがままじゃないですけど、気持ちを、働いて、見てもらう。錦水館さんで料理を出してもらって、わたしたちもそこで食べさせてもらうっていうのは、お互い相互理解がすごく深まりますし、いい方向に進むと思います」

また、ホテルの食事を通して広島の味が世界に広がることに期待を込めます。

ルンビニ農園 今田典彦 代表
「やっぱり、どうしてもこう日々、野菜と向き合って仕事しているものですから、なかなかぼくたちが営業活動というか、周知の活動っていうのはやっぱりできないですし、苦手です。ぼくらの代弁をして農産物を売ってくれるっていうのは本当に感謝です。いろんな国の方に食べてもらえるとうれしいです」

朝食に力を入れる前の錦水館グループでは、輸入食材も半分近く取り入れていたそうです。しかし、武内社長は旅行先に広島を選んで来てもらうからこそ、食事は「地元のもの」にこだわって、満足度をあげていきたいと意気込みます。

錦水館 武内智弘 社長
「日本の東京とか関西からのお客さまも多いんですけど、国内だけではなくて海外のお客さまがたくさん増えてきますので、そういったお客さまに食を通して喜んでもらえるように日々、ブラッシュアップできたらなと思います」

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