社説:働く女性 キャリア築ける環境を

 総務省が公表した2022年の就業構造基本調査によると、働く人(就業者)のうち女性は3035万人と17年の前回調査から121万人増え、過去最多となった。

 仕事をしている女性の割合は、53.2%と2.5ポイント上昇し、25~39歳で初めて8割を超えた。

 結婚や出産を機に離職する傾向が長く続いてきたが、共働きの増加や、保育所などの整備で家庭生活とも両立しやすくなってきたのが要因とみられている。

 ただ、女性が働き続けるにはまだ壁が少なくない。能力を発揮し、生き生きと社会で活躍できるような環境づくりに、政府や企業は引き続き注力していく必要があろう。

 就業者のうち、男性は3670万人と前回からわずかに減少したが、女性の増加が押し上げて全体数が6706万人と過去最多になった。

 見過ごせないのは、雇用されて働く女性の約半数をパート、アルバイトなどの非正規就業者が占めることだ。約2割の男性と比べると大きな差がある。

 非正規雇用は正社員と比べて賃金水準が低く、男女の収入格差の要因になっているのは否めない。女性の正規雇用比率が20代後半から下がる「L字カーブ」が問題となっている。家事や育児の分担が女性に偏り、時間の融通の利きやすい非正規を選ばざるを得ないことが背景にあるだろう。

 正規雇用で働き続けられる就労制度と職場づくり、家事・育児の分かち合いが大切だ。テレワークや時短勤務など柔軟な働き方をさらに広げることも求められよう。

 働く女性が増える一方、企業などの役員や管理職に占める女性の割合は、いまだ低い水準のままだ。20年の国勢調査に基づき、これら女性役職者(公務員含む)の割合をみると、京都府は17.7%、滋賀県は14.4%にとどまる。

 京滋に本社を置く東証プライム上場企業の取締役・監査役の女性比率は14.7%。大半が社外登用で、内部の女性管理職比率が10%に満たない企業が8割を超える。意思決定を行う立場の女性幹部育成が進んでいないことがうかがえる。

 多様な意見や価値観を反映できる企業は成長性も高いとされ、投資判断でも注目点とされている。人材の能力を生かし、経験や研修を重ねてキャリアを形成できるよう、企業は系統的に後押しすることが重要だ。

 女性の積極登用に向けた組織と意識の変革が欠かせない。

© 株式会社京都新聞社