「人数減って養成できない」海の安全守るライフセーバー不足 空から見守る先端技術に注目【わたしの防災】

静岡県内の海水浴場は7月中旬に海開きを迎え、本格的な海水浴シーズンに入っています。2023年も全国で水難事故が相次いでいますが、海水浴客の命を守るライフセーバーをめぐる環境が様変わりしています。

「海の日」に多くの家族連れでにぎわっていたのは、静岡県牧之原市の静波海水浴場。この海の安全を守るのは、牧之原ライフセービングクラブ連合のメンバー。彼らの活躍もあって、この海水浴場では2000年以降、死亡事故は1件も起きていません。ただ、ここ数年、大きな課題を抱えています。

<牧之原市 杉本基久雄市長>
「ライフセーバーの全体の人数がコロナ禍で減っているのが一番の原因で、養成ができない、行動が制限され育ってないのが現状なんです」

ライフセーバーが足りないのです。コロナ禍前、こちらの海水浴場は7月上旬に海開きをしていましたが、ライフセーバーの人手不足を理由に2022年と2023年の海開きは7月中旬にずれ込みました。

<牧之原ライフセービングクラブ連合 町田楓さん>
「(コロナ禍で)対面で勧誘できないのはとても難しい。SNSとかで探り探りやるのは難しい部分があった」

多い時は80人いたという東海大学のライフセービングクラブですが、いまは40人ほど。ライフセーバーの多くは大学生が担っていて、今後、ライフセーバーを安定的に確保していけるかは1つの課題です。

伊豆半島を代表する静岡県下田市の白浜大浜海水浴場。こちらではライフセーバーの負担を軽減するために、県と市が連携して新しい実証実験を始めました。

「今、ドローン離陸しました」

<ドローンからの音声>
「パトロールドローンが通過します」

ドローンを沖合に飛ばし、空から海水浴客を監視。ライフセーバーたちは、その映像をじっと見守ります。

<下田ライフセービングクラブ 山口智史理事長たち>
「ジェットスキーをご利用のお客様にお知らせします。白浜大浜海水浴場内のジェットスキーの利用はできません」
「聞こえてますかね?」
「いま手を挙げてました」
「あ、移動しますね。いいですね」

浜から離れたエリアでのトラブルにドローンが役立ちました。

<下田ライフセービングクラブ 山口智史理事長>
「全国的には(ライフセーバーの)なり手が減っている。大学生の数が減ってくると全体的に減ってくる。ドローンを使うことで年齢が高い人や四肢に障害がある方でも参画できたり人材の多様化にはつながる」

2024年夏の実用化に向けて県と市は実証実験を繰り返していく予定です。少子高齢化や過疎化が進む中、海水浴場の安全をどう保っていくのか、先端技術を導入することで選択肢が広がりそうです。

<キャスター>
海の安全を守るため導入が検討されているドローンですが、浜から離れた場所でも素早く駆け付けられる、空から声掛けもできるなどの利点があります。一方で今回の実験では、今後、増えるとみられている外国人の海水浴客への対応をどうするかなどの課題も見つかりました。人手が足りない分を先端技術でうまく補うことは、これからの社会、いろんな分野で必要になってきます。

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