大分県沿岸海域でミズクラゲが大量発生 漁業に深刻な打撃【大分県】

別府湾などで大量発生しているミズクラゲ=大分マリーンパレス水族館「うみたまご」提供
海中のクラゲを指し示す漁師の北野和貴さん=7月、別府湾

 県沿岸海域で今夏、ミズクラゲが大量に発生し、漁業に深刻な打撃を与えている。漁船の網が重さで破れるほか、取った魚もクラゲに触れて傷つき商品価値を損なうため、別府湾ではサワラやハモの漁を見送るケースが続出。県南の海でも影響が出ており、水産関係者は「こんな事態は初めて」と困惑している。

 「クラゲが水面を埋め尽くしている」。別府湾周辺で流し網、定置網漁をする日出町大神の漁師北野和貴さん(50)は船上で顔をしかめた。

 毎年この時期は主にサワラを取っている。今年7月はわずか2日間しか漁に出なかった。成果が見込めず、燃料高騰も痛手になるからだ。「この仕事を30年間やっているが、経験したことがない」

 県漁協日出・別府支店によると、支店の底引き網漁の売り上げは前年同期の約6割に落ち込んでいる。職員は「行政に駆除や生産者が失った収入の補填(ほてん)をしてほしい」と訴える。

 例年なら別府湾のハモ漁で活気づく杵築市の水産業にも影響が出ている。県漁協杵築支店では6月のハモの水揚げ量が755キロで、前年の5194キロから激減した。

 ミズクラゲが大量発生した原因は分かっていない。県北部水産グループ(豊後高田市)が昨年12月~今年3月、湾周辺でクラゲの幼生「エフィラ」の個体数を調べたところ、1立方メートル当たりの個体数は前年度より増えていた。

 同グループは「繁殖時期に水温などの環境が適していた可能性がある」とみている。

 県水産研究部(佐伯市)は同市の漁業者から「網にクラゲが入り困っている」との報告を受けている。

 県水産振興課は「駆除などの対策はなかなか難しいのが実情。漁獲高にどれだけ響くのかは、まだ分からない」と話している。

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