兵庫県立2大学、県民は完全無償化 所得制限なし、大学院も対象 24年度から段階実施

兵庫県立大=2022年、神戸市西区

 兵庫県の斎藤元彦知事は4日、県立大(本部・神戸市西区)と県立芸術文化観光専門職大(豊岡市)について、県内在住者を対象に2024年度から段階的に入学金と授業料を無償化すると発表した。4回生などから順次実施する考えで、大学院も対象とする。所得制限は設けない。斎藤知事は「将来設計を考える大事な時期でもあり、踏み込んだ支援をしたい」と話した。

 知事就任3年目に合わせて打ち出したZ世代(1990年代後半~10年代前半に生まれた若者)への集中支援の一環。県によると、近年は学生の3割超が奨学金を借りて進学。卒業時には平均で約310万円の借入金があり、結婚や出産、子育て、家の取得といった将来設計に影響を与えているという。

 斎藤知事は会見でこうした現状を説明。「県内の学生が不安なく教育を受け、安心して将来設計を描けるよう、一刻も早く無償化を打ち出すことが大事だと考えた」とし、「若い世代の流出防止にもつながる」と強調した。

 県立大は県内9カ所のキャンパスに6学部と9研究科などがそろい、同専門職大は単科大として21年に開学した。授業料はいずれも年額53万5800円で、県民の入学金は28万2千円、県外在住者は42万3千円となっている。

 県によると、22年度に県立2大学に入学した学生のうち、県内在住者は約5割。数年以内には制度の完全実施を目指す方針で、最終的には全体で年間約23億円の費用を見込む。県外では大阪公立大でも同様の動きがあるが、県の担当者は「兵庫、大阪以外では例はないのではないか」とする。

 また斎藤知事は、県立2大学以外の学生の支援についても言及。県は中小企業などに勤める30歳未満を対象に、就職後5年間は奨学金返済の本人負担をゼロとする制度を23年度に創設したが、これを拡充する方向で検討を進めるという。

 会見では「国際的には国公立大の無償化が大きな潮流だ」とも指摘し、国に対し、高等教育の費用負担軽減や奨学金の返済支援充実などを求める考えを示した。(田中陽一)

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