「強豪校ですら初戦から全力」静岡県勢“令和”未勝利のワケ…初陣・浜松開誠館「底がみえないチーム」夏の甲子園6日開幕

いよいよ、8月6日から第105回全国高校野球選手権大会が阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕します。静岡代表は、春夏通じて初めて夢舞台に立つ浜松開誠館高校。期待が高まりますが、令和の時代に入って、静岡の高校野球が苦境に立たされていることをご存じでしょうか。

【写真を見る】「強豪校ですら初戦から全力」静岡県勢“令和”未勝利のワケ…初陣・浜松開誠館「底がみえないチーム」夏の甲子園6日開幕

かつては、静岡や静岡商、浜松商、最近では、常葉大菊川が活躍し、サッカーとともに“高校野球の強い県”として全国に名をとどろかせてきた静岡県。

しかし、令和になってから大舞台で輝くことができません。県勢の夏の甲子園での勝利数はなんと、ゼロなのです。

「静高が甲子園に行かないと盛り上がらない」といわれ、熱狂的なファンの多い静岡も、2022年、春夏連続で甲子園に出場した日大三島も、全国大会では初戦で涙を飲みました。

令和に入ってから甲子園で勝てていない都道府県は8つ。特に静岡が深刻なのが、春のセンバツでも勝てておらず、現在、6連敗中です。もし今夏で1勝も挙げられないとワーストを更新しかねない事態です。

では、なぜ勝てないのか。長年、静岡の高校野球を取材してきた雑誌『静岡高校野球』栗山司編集長は、「ここ数年の代表校は、静岡大会を制するだけでいっぱいいっぱいになってきた。強豪校といえども、大会初戦からまったく手が抜けない。全力で戦っていくので余力は残っておらず、甲子園では実力を十分に発揮できずに終わってしまう」と分析します。

今年も、春夏合わせて県内最多となる43回甲子園の土を踏んでいるシード校の静岡が初戦で敗退、夏連覇を目指した日大三島もノーシードの東海大静岡翔洋に敗れるなど、まさに群雄割拠の時代。静岡のレベルが決して低いではなく、県全体の力が上がっていることで、このような現象が起きているのではないか、というのです。

確かに、強豪ひしめく東海地区の大会で、静岡県勢は“結果”を残し続けています。2021年の秋季大会では、日大三島と、その後のセンバツ出場の選考をめぐり、世間を揺るがした聖隷クリストファーが優勝と準優勝を分け合い、春季大会では、2021年から静岡県勢が3連覇を達成しています。

さらに、指導者の顔ぶれも様変わりしています。2002年、兵庫・報徳学園でセンバツ優勝を果たした永田裕治監督(日大三島)をはじめ、2000年夏準優勝の東海大浦安を率いた森下倫明監督は東海大静岡翔洋で、2007年、静岡県勢29年ぶりのセンバツ優勝となった常葉菊川(現常葉大菊川)の森下知幸監督も御殿場西で指揮を執るなど、県内にはいま、甲子園で実績を残した指導者が多くいます。

「永田監督が日大三島に来られて以降、静岡に有望選手が集まり始めている」(栗山編集長)、「これまでは県外から“2番手”の選手しか集まっていなかったが、ここ数年、バリバリのレギュラークラスがやってくるようになった」(高校野球関係者)。これまで中学世代の優秀な選手が次々と県外へ流出していた静岡は、いまや「いい指導者のもとでプレーしたい」という県外の生徒が集まる地区へと変貌を遂げつつあるのです。

「県の代表として、静岡百数校のチームに絶対に恥ずかしくないチームにして、甲子園に乗り込んでいきたい」

では、“赤き軍団”浜松開誠館はどうか。創部26年目のチームを甲子園初出場へと導いた佐野心監督は、常葉菊川時代に監督として2008年夏の選手権準優勝。さらに、現在、プロ野球中日ドラゴンズの二軍打撃コーチを務める中村紀洋さんは2017年から約5年間、非常勤コーチとしてバッティングなどを指導してきました。

これに魅力を感じた静岡県内外の力のある選手が集結。ついに甲子園初出場をつかみ取りました。

栗山編集長は「浜松開誠館はここ数年の静岡代表とはちょっとイメージが違い、まだ底が見えないチーム。能力からしたら、静岡大会では多分、60~70%ぐらいしか出していない。甲子園へ向けて余力が残ってる」と期待を寄せます。

真っ赤なキャップに、グレーのユニホーム。メジャーリーグを彷彿とさせるようなユニホームで、すでに話題を集めている浜松開誠館。今度は、その実力で全国を驚かせる番がやってきました。8月10日、聖地甲子園でそのベールを脱ぎます。

© 静岡放送株式会社