日本代表MF鎌田大地が加入したイタリアの名門ラツィオを解説!熱すぎるファン、栄光と挫折

今季ドイツ1部フランクフルトとの契約が満了したMF鎌田大地は4日、昨季リーグ戦2位の強豪イタリア1部ラツィオが獲得したと発表した。

鎌田はビアンコセレスティ(イタリア語で白と水色、クラブカラー)に袖を通した初めての日本人となった。

これまで日本人が所属したことがないクラブのため、どのようなクラブが知らないサッカーフリークもいるだろう。そこで今回はラツィオがどのようなクラブなのかを解説する。

実は宿敵より古い首都の名門クラブ

首都ローマのクラブといえば、元日本代表MF中田英寿さんが所属したローマのイメージが強いが、実はラツィオはローマより27年前に創設されたクラブだ。

イタリア人将校のルイジ・ビビアレッリが設立した前身のラツィオ競歩協会が前身となり、1900年にクラブが創設された。

1958年に国内カップ戦コッパ・イタリアを制し、1973-74シーズンにはリーグ初制覇を経験した。ただその後は長い低迷期に入り、1990年までに2度の2部降格をするなど、苦しい時代を過ごした。

イタリア発の株式化!栄光と挫折

90年代に入ると変革期に入った。1992年に大手食品会社チリオのセルジョ・クラニョッティオーナーがクラブ会長に就任。イングランド代表のテクニシャンMFポール・ガスコインらを積極補強してチームの強化が進んだ。

そして1998年にイタリアのサッカークラブで初めて株式を上場し、資金調達に成功。史上最古クラスのプレースキッカーMFシニシャ・ミハイロヴィチ、人間ブルドーザーFWクリスティアン・ヴィエリらより強力な選手補強を実行し、1998-99にUEFAカップウィナーズカップ(UEFAヨーロッパカップ(EL)の前身)の制覇、1999-00シーズンに2度目となるスクデット獲得に成功した。

全盛期のラツィオは下部組織出身のイタリア史上最高峰のDFと語り継がれるアレッサンドロ・ネスタ、ミハイロヴィチ、バルセロナ出身のパスマスターMFイバン・デ・ラ・ペーニャ、ポルトガル代表FWセルジオ・コンセイソン、攻守にいぶし銀の活躍を見せたMFデヤン・スタンコヴィッチ、ヴィエリ、闘牛士と称された左利きの点取り屋FWマルセロ・サラス、魔法使いと形容されたテクニシャンMFフアン・セバスティアン・ベロン、世界屈指の潰し屋MFディエゴ・シメオネ、ペナルティーエリアで違いを発揮するFWロベルト・マンチーニと錚々たるメンバーが揃っていた。

一時はセブンシスターズ(イタリアの強豪7クラブの敬称)の一角として一時代を築き上げたが、ビッグネームの獲得に多大な資金を使ったため財政面がひっ迫し、オーナー企業の業績悪化やイタリア国内のサッカーバブルが弾けるなどして、財政が悪化した。

そのためクラブシンボルだったネスタのミラン放出など、多くの主力が流出。2部降格の憂き目には合わなかったが、長い期間に渡って中位を漂う中堅クラブと化してしまった。

熱すぎるサポーターとローマーダービー

チームが低迷してもイタリア国内屈指の闘志を持ったサポーターがチームを支え続けた。ゴール北側裏に集結するクルヴァ・ノルド(ウルトラス)の激しい応援は有名で、スタディオ・オリンピコ(ホームスタジアム)に地響きを響かせるような応援は圧倒的だ。

ただ熱すぎるがゆえに過去に多くの問題を起こしてきた。2019年2月開催のUEFA EL決勝トーナメント1回戦にローマ市街でラツィオサポーターはセビージャサポーターと衝突し、4人の重軽傷者が出るほどの暴動が発生した。

この他にも2019年にミランMFティエムエ・バカヨコ、今年はレッチェDFサミュエル・ウンティティに人種差別チャントなどを浴びせるなど、イタリア国内外で危険視されている。

過激なサポーターは宿敵ローマとの決戦デルビー・デッラ・カピターレ(通称ローマダービー)ではサポーター間の衝突が発生して警察に鎮圧される事態も何度か発生したという。ダービーではローマが73勝、ラツィオは57勝とライバルに水をあけられている。

狂暴ではあるものの、情に厚いサポーターと知られるラツィオのウルトラス。鎌田は彼らの激しい声援を受けて、オリンピコのピッチで彼らを沸かせられるか注目されている。

近年のラツィオと求められる鎌田の役割

昨季2位に入ったラツィオは、超攻撃的サッカーを標榜するマウリツィオ・サッリ監督が2021年に就任してから魅力的な攻撃戦術「サッリ・ボール」を見せて2021-22にシーズン5位と徐々に成績を上向けてきた。

昨季12ゴールを決めた天性のワンタッチストライカーFWチーロ・インモービレ、変幻自在のドリブルや精度の高いパスを持つフェリペ・アンデルソン、突破力とチャンスメイクに長けるMFマッティア・ザッカーニの攻撃ユニットはセリエA屈指の破壊力を誇る。

ただ中盤の心臓ともいえる攻守に存在感を見せていた万能型MFセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチがサウジアラビア1部アル・ヒラルに今夏移籍したため、中盤の補強が急務になっていた。そこで日本代表やフランクフルトの中盤で躍動していた鎌田に白羽の矢が立った。

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今季はUEFAチャンピオンズリーグ挑戦と24季ぶりのスクデット奪取を狙うラツィオ。中盤の核として期待される鎌田がイタリアでどのようなプレーを見せるのか。日本屈指のチャンスメイカーの活躍から目が離せない。

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