山に埋もれた「旧海軍の水道遺構」、市職員が独自調査で発見 「先端技術ですごい物造った」

舞鶴市に残る旧海軍水道遺構を紹介する冊子を作った神田さん(舞鶴市浜町)

 京都府舞鶴市職員として水道業務に携わっている男性が、旧海軍が造った市内の水道遺構を独自に調査して冊子にまとめた。山中に埋もれていた「杉山水源水道」の遺構を見つけ出し、国の重要文化財に指定されている他の貯水・配水施設も巡って書き上げた力作。写真や図面を掲載して市の水道インフラの基盤となった旧海軍水道に光を当てた。

 市水道整備課の再任用職員神田秀之さん(62)。市役所に残る古い資料を整理する中で、戦時中に爆薬を製造した海軍第三火薬廠の水道図面を見つけた。同火薬廠は現在の同市白屋の舞鶴工業高等専門学校周辺に当たり、近隣にある青葉山中腹の杉山地区から水を引いていたという話を知っていた神田さんは、他の図面も参考にして未確認の杉山水源水道に関する施設を調べることを思い立った。

 3月から休日を利用して同山中に分け入ると、配水池や浄水場の跡とみられるコンクリート構造物を発見し、管路の変更点に設置する升も確認した。「立派な施設であり、物言わぬ歴史の証人を探し当てて感動した」と振り返る。

 舞鶴市では1901年の旧海軍舞鶴鎮守府開庁に先立ち、近代水道の整備が始まった。神田さんは市水道の初期の姿を知る一助にしようと、他の海軍水道遺構も実地調査した。

 7月3日に発行した冊子では、明治時代に造られた取水えん堤や取水隧道が残る桂貯水池と岸谷貯水池、れんが造りの導水壁がある北吸配水池などを図面や写真を交えて詳細に報告。いずれも国の重要文化財に指定されている。

 杉山水源水道とは別の第三火薬廠跡周辺の配水池跡や、由良川周辺の廃止された浄水場跡も記録として収めている。神田さんは「海軍が当時の先端技術を使ってすごい物を造ったことを改めて感じた。冊子を通じて舞鶴の歴史や水道に理解を深めていただければうれしい」と話す。

 冊子はA4判、93ページで1300円。市図書館でも読むことができる。購入などの問い合わせはメールアドレスcoda2011nouveau@hera.eonet.ne.jp。

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