「最適」な福井旅って? 新幹線駅から目的地へ、新アプリや福井版トゥクトゥクで便利×エンタメ追求

【グラフィックレコード】福井県の玄関口
市街地を楽しみながら周遊する低速電動カート「ふくトゥク」=2022年3月、福井県福井市中央3丁目の足羽川河川敷

 バスを乗り継ぐか、ローカル線で車窓の風景を楽しむか。それともシェアサイクル? 自分に合った最適な旅の手段を見つけ、アプリ一つで予約、決済までが可能になるサービス「MaaS(マース)」。北陸新幹線の福井県内開業に合わせ2024年春に利用が始まる予定で、福井を初めて訪れる旅行者の助けになりそうだ。

 シームレス(切れ目のない)な交通サービスの提供に向け、嶺北地域の官民でつくる協議会が22年に発足。協議会は県民アプリ「ふくアプリ」のサービスとして、経路検索や予約決済以外に、エリア別の企画切符の販売なども検討している。

 協議会の会長で福井大講師の浅野周平さんは、新型コロナウイルス禍を受け、全国的に電子クーポン利用が広がり、旅行先でアプリを使う土壌はできているとし「機能面や操作性にこだわり、福井旅の必需品にしたい」と意気込む。

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 県内新幹線4駅で最も交通網が発達する福井駅。開業後は1日当たり数千人の観光客が訪れることも想定され、目的地への案内が課題といえる。例えば、一乗谷朝倉氏遺跡に行くためのバスは2路線あり、乗り場は東口と西口に分かれる。鉄道網もえちぜん鉄道、福井鉄道、ハピラインふくい、JR越美北線が入り組み、目的地まで何に乗ればいいのか分かりづらい。

 福井県新幹線政策連携室の小嶌義広室長は「案内サイン一つにしても、土地勘がない人はどう感じるかなど想像力を生かして考える必要がある」と話す。

 市は東口に設ける新たな観光案内所にコンシェルジュを配置する計画。交通機関の遅延情報や各観光地のリアルタイム情報を、訪れた人に提供する。

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 福井駅周辺では、楽しみながら市街地を周遊する2次交通のエンタメ化も模索されている。

 福井商工会議所は、窓やドアがない7人乗りの低速電動カート「ふくトゥク」の実証実験を昨年3月に始めた。名称はタイなど東南アジア諸国で手軽な移動手段として人気の三輪自動車「トゥクトゥク」と「ふくい」をかけた。

 「トゥクトゥクは単なる移動手段ではなく、その土地ならではの体験の一つ。ふくトゥクも旅の思い出に残るだろう」と同会議所の林幸治新幹線開業・都市再生推進課長は力を込める。

 実証実験は、観光ガイドも同乗し、春と秋の行楽シーズンに養浩館庭園や北ノ庄城址、足羽山周辺で計20日間運行。延べ約1500人が利用し、全体の98%が「満足」と答えた。20年からは、屋根がない2階建てバスもイベント期間などに試験運行しており、評判は上々だ。

 ただ、実用化には、交通事業者が二の足を踏んでいる。人手不足の上、収益性がなければ運行を継続していくことは難しい、という理由だ。福井市内のある事業者は「県外客を歓迎し目的地に送り届けたいという使命感はあるが、実際の利用者数は読めない。経営判断に悩む」と打ち明けた。

⇒記者のつぶやき「侮れない看板」

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 来年春の北陸新幹線県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シンフクイケン」は第4章に入ります。テーマは「駅を降りてから」。県外客に観光地などへどう足を運んでもらうか、2次交通を含めた取り組みと課題を探ります。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

シンフクイケン連載シリーズ一覧

【第1章】福井の立ち位置…県外出身者らの目から福井の強み、弱みを考察

【第2章】変わるかも福井…新幹線開業が福井に及ぼす影響に迫る

【第3章】新幹線が来たまち…福井県外の駅周辺のまちづくりなどをリポート

【第4章】駅を降りてから…観光地へどう足を運んでもらう? 2次交通を含めた取り組みと課題を探る

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