【どうする家康】お市との約束を果たせぬ家康に同情の声

古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。8月6日の第30回『新たなる覇者』では、家康の永遠のライバルと言える真田家の登場と、幼い頃の小さな約束を守れなかった家康の痛みにスポットが当たった(以下、ネタバレあり)。

届いた書状の内容に苦悩する徳川家康(松本潤)(C)NHK

■ どうする家康、お市を助けに行きたいのに

羽柴秀吉(ムロツヨシ)が信長亡きあとの織田家の実権を着々と握っていく一方、家康は信長の死で空白となった関東の支配を盤石にするため、関東の雄・北条氏政(駿河太郎)と氏直(西山潤)親子と対決することを優先。家康たちは北条家を圧倒し甲斐と信濃を手に入れるが、その間に柴田勝家(吉原光夫)と秀吉が激突する。

娘たちの言葉に手を止める市(北川景子)(C)NHK

勝家に嫁いだ信長の妹・お市(北川景子)は家康からの援軍を期待するが、秀吉の勢いとまだまだ油断ならない関東の状況を考えて、家康はやむなく静観。その結果、勝家とお市は自害に追い込まれ、家康は怒りと悲しみのなかで「秀吉は、わしが倒す」と宣言した・・・。

■ 秀吉の活躍の裏で、家康と真田の因縁誕生

「あまりにも展開が早すぎるのは、ドラマの尺の都合?」と疑いたくもなるが、本当に本能寺の変から1年足らずで、あっという間に信長の基盤を自分のものにした羽柴秀吉。この頃は、秀吉の動きばかりにスポットが当たりがちだが、一方「我らが神の君」はなにをしていたのか? というのを見せる形となったのが、この第30回だった。

まずは、ここまで今川氏真(溝端淳平)をかくまった以外、特に出番がなかった北条家(ちなみに『鎌倉殿の13人』の北条家の子孫にはあらず)が、満を持して登場。とはいえこの『天正壬午の乱』でSNSが異様に色めき立ったのは、北条家ではなく、2016年の大河『真田丸』でおなじみの「真田家」の名前が出た瞬間だった。

まずは軍議で「真田は厄介」と言われた瞬間、「でた真田!(脳内でかかる『真田丸』のテーマ)」「確かに厄介ですね! すぐ大博打始めちゃいますからね!!」と大盛り上がり。続いて、真田に恨まれること確実の和睦を、北条家と結ぶに至っては、「真田との因縁が爆誕。大阪まで引きずるぞ」「一番恨まれちゃいけない人に恨まれちゃった」と、長らく続く真田家との対決を期待する声が次々に上がった。

家康より武田家旧臣を預かった井伊直政(板垣李光人) (C)NHK

またそれと並行して、元服したての井伊直政(板垣李光人)が、猛者ぞろいの武田家旧臣たちを預かり「一軍の将」になることが決定。歴史に残るバーカーサー軍団「井伊の赤備え」誕生の瞬間に、こちらも「『武田の赤』が『井伊の赤』に変わった」「意外と明言されないことも多い武田遺臣から井伊の流れ、今回は分かりやすい」など、歓迎の声が並んだ。

■ 織田兄妹のもとに行けなかった家康

ちゃっかりと家臣団に復帰したイカサマ師・本多正信(松山ケンイチ)も上手く扱うようになり、周りのムードに流されずに、冷静な判断ができるようになった家康。しかしその成長が、幼い頃になにげなくお市と交わした「必ず助けに行く」という約束(これもまた第4回からの壮大な伏線回収)を阻むことになるとは、なんと切ない初恋の終わりだろう。

SNSでも「徳川のことを思えば、個人的な感情でお市さまを助けにはいけないよなあ。これはみんながつらい選択」「人情優先してしまった故に家が破滅したら元も子もないしな」「織田の兄妹は、どちらもヤッスに来て欲しかったけど来てもらえぬのか・・・」という、切なさを共有する声が続々と。

そして秀吉の「白兎、白兎♪」(海老すくいのメロディで)に触発されたかのように、お市の死に久々に悲しみを爆発させ、打倒秀吉を宣言した家康。次回はいよいよ、実質的にこの2人の全面対決と言える『小牧・長久手の戦い』に突入。まさに白兎ならぬ狸が、猿を大いに翻弄する戦いぶりと「井伊の赤備え」デビュー戦を楽しめる展開になることを期待したい。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。8月13日の第31回『史上最大の決戦』では、信長の次男・織田信雄(浜野謙太)から助けを求められた家康が、10万を超える秀吉の軍と対決する『小牧・長久手の戦い』に至るまでが描かれる。

文/吉永美和子

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