トキの巣立ち全国最多 いしかわ動物園から7羽

いしかわ動物園でふ化したトキのひな(同園提供)

  ●ストレス少ない飼育奏功か

  ●放鳥実現に期待高まる

 国特別天然記念物トキの繁殖に取り組んでいる全国7施設で、今春生まれたひなが幼鳥まで育ち巣立った個体数は、いしかわ動物園(能美市)が7羽で最多だったことが分かった。全国では計21羽だった。同園ではペアごとの分散飼育や、好物であるドジョウを生きたまま与えるといった試みでトキが生活しやすい環境づくりに取り組んでおり、ストレスの少ない飼育が奏功した可能性がある。能登でのトキ放鳥実現に向けても弾みとなりそうだ。

  ●全国7施設で計21羽

 各施設の繁殖結果を佐渡トキ保護センター(新潟県佐渡市)がまとめた。その他の施設は多摩動物園(東京)の4羽が最多で、島根県出雲市と新潟県長岡市の両トキ分散飼育センターが各3羽、佐渡市トキふれあいプラザと佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションが各2羽だった。国内の飼育下にあるトキの総数は181羽となった。

 いしかわ動物園では成鳥10羽を飼育し、3組のつがいが誕生している。今年は計13個の卵を生み、ふ化した8羽のうち7羽が幼鳥に育った。幼鳥は秋ごろに佐渡に移送され、放鳥される予定だ。

 同園では従来、複数のつがいを同一ケージで育てていたが、今年は雌雄ペアごとに飼育した。生き餌を与える全国的に珍しい試みにも取り組んでおり、担当者は「今後もトキが生活しやすい環境づくりを研究したい」と話した。同園で幼鳥まで育ったのは昨年が4羽、一昨年が6羽だった。

  ●本場佐渡から視察に

 いしかわ動物園の繁殖数が最多だったことを受け、7月にはトキ繁殖の本場である佐渡トキ保護センターの筆頭獣医師が同園を視察に訪れた。ケージの配置や、ドジョウの生き餌を与えていた点、他の動物を育てる知見が集まっていることなどが飼育が順調な要因とみて、同センターは他の施設にもノウハウを伝える計画という。

 環境省はトキの野生復帰に向け、現在は佐渡での放鳥に取り組んでいる。今後、本州での定着に向けた放鳥も計画され、候補地として昨年8月に宝達志水町以北の能登9市町と出雲市を選出した。2026年度以降の放鳥を計画している。

 餌場などの環境整備を進めている石川県の担当者は「いしかわ動物園での繁殖、飼育実績を重ね、将来の放鳥への弾みをつけたい」と期待を寄せた。

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