JAXA、東海クラリオン、ATI、 「後のせ自動運転システム」に 関する共創活動スタート

本共創では、東海クラリオンとATIが地域限定で自動運転レベル4の実現をめざし開発をすすめている“YADOCAR-iドライブ”に、JAXAのセンチメータ級測位補強信号を活用した高精度単独測位「MADOCA-PPP」を適用することで、測位の精度向上と高速化を実証する。

YADOCAR-iドライブとMADOCA-PPPの組み合わせにより、過疎化の町における日常の足として、また、観光地におけるラストワンマイル移動手段としてレベル4の自動運転を市場最安値で実装することを目指すとしている。

共創活動の背景

全国に2000箇所以上ある限界ニュータウンにおいて、交通弱者の生活の足として自動運転車は期待されている。過疎地での高齢者の日常の移動に対しては、決まったルートかつ狭い道を低速で走行する安価な自動運転車が求められている。

また国内外のリゾート地において、観光スポットでのラストワンマイルやワイナリーの中での移動など、自動運転の車両が求められる場面は少なくないという。

これらのニーズに応えるべくTCLとATIが共同開発しているのが、既存のモビリティに最小限の機材の追加搭載で自動運転を実現するYADOCAR-iドライブだ。追加機材を最小化するため、また、国内用と国外用のシステムを共通化するため、YADOCAR-iドライブでは、走行ルート作成に準天頂衛星“みちびき”を主軸にしたQZSSの位置情報を用いている。

具体的には、アジア太平洋地域への展開等を想定し、“みちびき”2~4号機および初号機後継機のL6Eチャンネルで送信される実証実験向けのセンチメータ級測位補強信号を活用した高精度単独測位(MADOCA-PPP)を利用している。

JAXAが行なう高精度測位技術(MADOCA-PPP)の高度化と、とTCL/ATIが行う自動運転システムの現場環境での走行実証を組み合わせることで、レベル4の自動運転の実現が期待できるとしている。

共創活動の内容

TCLは、自治体及び観光関連業界に対し、低価格自動運転の活用モデルとして「後のせ自動運転システムYADOCAR-iドライブ」を提案、自動運転走行のデモンストレーションを実施し、システムの有用性、利便性を可視化する。

ATIは、MADOCA-PPPに対応したマルチGNSS受信機の開発・製造を行う株式会社コアと連携協力し現場ごとに違う環境に適応した自動運転システムの開発を実施します。また、走行結果を受信機開発にフィードバックすることで、受信機の自動運転利用への最適化を行い、自動運転システム全体の高度化を目指す。

JAXAは、衛星測位利用者が世界中で時間と場所を問わずセンチメータ級の高精度測位を行うことができるよう、MADOCA及びMADOCA-PPPの技術開発に継続的に取り組んでおり、その社会実装を目指している。衛星測位はユーザの利用形態・環境に性能が大きく依存する。

本共創では、低速のEVにおけるレベル4自動運転実現を目指すユーザの測位性能及び利便性を高めるため、MADOCAの“みちびき”L1/L5信号対応及び中国の衛星測位システムBeiDou3への対応を行う。これにより対応する衛星数が30機以上増えるという。

また上空視界が限られたアーバンエリアや山間地等においては準天頂衛星システムのMADOCA-PPPサービスを地上配信情報によって補完することで、測位精度の向上を目指す。また、MADOCAが生成する補正情報を用いた演算処理により高精度単独測位を行うユーザ測位用ソフトウェアであるMALIBを高度化し、従来20分程度必要としていた初期収束時間を1分以内へと短縮を目指すとしている。

3者の協力により、最初の1~2年で、MADOCA及びMADOCA-PPP高度化とYADOCAR-iドライブの実証走行を並行して実施し、開発と利用のフィードバックループを回す。そこで運用実績を積み、以降の現場実装を加速させる計画という。

目指す未来

これまで、地域の課題は見えていても、高額な自動運転カーの導入に踏み切るのは困難だった。本共創では、衛星測位技術を活用することで、市場最安値の自動運転の提供を目指すという。ラストワンマイルの移動手段がなかった観光地、介護や通院など日常の足に困っている市街地、高齢者の事故リスクに悩む限界集落、こうした地域へ導入ができれば、利便性・収益性の観点でさまざまなサービスとの組合せが生まれ、運用費を限りなくゼロにできるとしている。

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