小説執筆の極意伝授 島清恋愛文学賞全行事、金沢学院大で 「視点が重要」学生学ぶ

羽鳥氏(右奥)から小説の書き方を教わる参加者=10日午前10時半、金沢学院大

  ●午後に贈呈式

 金沢学院大が主催する第29回島清(しませ)恋愛文学賞の贈呈式を前に10日、金沢学院大で創作ワークショップが開かれた。贈呈式とワークショップの会場が同大となったのは初めてで、文藝春秋で長年文芸誌の編集に携わった羽鳥(はとり)好之特任教授が、作家を志す同大の学生や錦丘高文芸部の生徒ら約20人に小説の書き方のいろはを伝授。「小説は誰の視点で描くかが重要。視点をぶらさずに作品をつくってほしい」と語った。

 推薦作の選定から贈呈式まで金沢学院大の学生が関わっていることを広く発信するため、会場も同大とした。

 羽鳥氏は、参加者が事前に書いた小説を例に創作のポイントを解説し、「世界観や読みやすさに影響するため視点は一度決めたら作品の中で変えるべきではない」と強調した。

 その上で、ストーリーを組み立て、描写を重ねることで小説が完成するとし、「人間の切実さを表現するのが小説の役目。心を打たれた経験や、かけがえのない心の中にあるものを描いてほしい」と呼び掛けた。

 高校生の作品については設定や描写などが秀逸だと評価し「大学生になっても小説を書き続けてほしい。いろんな作品を手に取り、好きな作家を見つけていくことで引き出しが増える」と助言、大学での講義内容を紹介した。

 錦丘高3年の山下剛幸さん(18)は「編集者ならではの視点が満載だった。これからの創作に取り入れて自分を高めたい」と充実した様子。金沢学院大文学部2年の宮本学彦(のりひこ)さん(19)は「初めて羽鳥先生の講義を受けたが、視点が大切という話をはじめ思い当たる点が多かった」と話した。

 贈呈式は同日午後から行われ、「ミス・サンシャイン」(文藝春秋)で受賞した吉田修一さんをたたえる。吉田さんは選考委員の作家村山由佳さんを交えて、学生からの質問に答える。

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