【ベトナム】活況EC、外資が投資攻勢[商業] 有望市場、シェア巡る競争過熱

べトナムの電子商取引(EC)市場では、外資系の大手プラットファーム企業の投資拡大が続いている。市場規模は右肩上がりで伸び続けており、中国・阿里巴巴集団(アリババグループ)傘下の「ラザダ」が物流網などに積極投資を強化しているのに加えて、「TikTok(ティックトック)」も交流サイト(SNS)とECを組み合わせた「ソーシャルコマース」を強化している。有望市場のシェアを巡る競争が過熱している。

「クロスボーダーECエキスポ」に出展したTikTokショップ=10日、ホーチミン市7区

南部ホーチミン市のサイゴン展示会議センターで10日始まったECの国際展示会「クロスボーダーECエキスポ」では、ECプラットフォームのほか、小売り、物流、ITソリューションなど幅広い分野の企業が出展し、EC市場の順調な拡大をうかがわす盛況ぶりだった。SNSで活躍する著名なインフルエンサーも数多く招待され、イベントに花を添えている。

同展示会に出展した中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の姉妹ブランドで、スマートフォン販売を手がける「オナー(Honor)」のボー・テー・ビー・マーケティング部長はNNAに対し、「私たちは今年7月からベトナム市場に復帰したばかりなので、今回はブランドを認知してもらうことに加えて、ECや物流分野で新たなパートナーとつながるチャンスにしたい」と語った。

EC用宅配大手ザオハンニャイン(GHN)のチャン・バン・チー・ビジネス開発マネジャーは、「EC市場は安定した成長を続けており、経済全体における重要度が高まっている」との見方を示した。

■市場規模は200億米ドル超

ドイツの調査会社スタティスタによると、ベトナムの2022年のEC市場規模は164億米ドル(約2兆3,600億円)で、14年比で5倍強に伸びている。23年も前年比25%増の205億米ドルに達する見込みで、新型コロナウイルス流行による「巣ごもり」特需が一巡した後も市場は右肩上がりの成長が続いている。小売売上高に占めるEC比率は7~8%に上昇し、25年には10%に達すると予測されている。

こうした中で投資を拡大しているのが外資勢だ。ベトナムのEC市場はシンガポール系のショッピーが主導してきたが、中国系のTikTokやラザダも割り込み、シェアを激しく争っている。外資系大手が投資拡大を続ける様子を、ダウトゥ電子版は「ECプラットフォームの『外資戦争』だ」と過熱ぶりを伝えた。

アリババグループは16年に「ラザダ」を買収して以降、同社への投資拡大を続けている。ベトナムをはじめとする東南アジアのEC市場拡大に合わせて、今年4月にも3億5,290万米ドルを追加出資した。ベトナムでは物流システムの整備にも注力しており、今年3月には南部ビンズオン省に敷地面積2万平方メートルの商品仕分け倉庫を新たに開設した。今後は北部バクニン省、南部ロンアン省、中部ダナン市などに物流倉庫を拡大する方針だ。

■TikTokが急拡大

中国系動画投稿アプリ「TikTok」発のECプラットフォーム「TikTokショップ」もベトナムで急成長を続けている。TikTok運営企業の周受資・最高経営責任者(CEO)は6月に、向こう数年間で東南アジア市場に数十億米ドルを投じると発表し、EC事業の攻略に本腰を入れ始めている。

ベトナムの市場調査会社メトリックによれば、上半期(1~6月)のプラットフォーム別の取引額ではラザダを抜き、ショッピーに次ぐ2位に躍進した。22年にサービスを開始したばかりだが、投稿される動画の娯楽性と小売りを融合させることで若年層の購買意欲をかき立てている。

今回の展示会に出展した中国系化粧品メーカーの担当者によると、「TikTokショップ」は他のプラットフォームと比べて、出店企業が納める運営手数料が低額であることも拡大の要因に挙げられると指摘した。

■地場プラットフォームは苦戦

外資プラットフォームの勢いが増す中、地場「ティキ」「センド」は苦戦が続いている。ティキでは今年7月に創業者兼CEOのチャン・ゴック・タイ・ソン氏が辞表を提出したと報じられた。ダウトゥ電子版は、計99%のシェアを占める外資3社による競争が、今後はさらに激しくなるとの見通しを示した。

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