不正から再起目指す 三菱電機長崎製作所 ハード、ソフト両面で進む改革

新たに導入された検査データの自動記録システム=三菱電機長崎製作所

 三菱電機長崎製作所(西彼時津町)では2021年6月、鉄道車両用空調装置などで契約と異なる検査やデータの虚偽記載が横行していたことが発覚した。品質不正問題はその後、同社全体へと波及し、日本の製造業への信頼を揺るがす事態に発展。同社は昨年10月に最終調査報告書を公表した。半年を過ぎ、再起を目指して改革に取り組む長崎製作所の現状を取材した。
 長崎では、顧客の指定する内容の検査をせず架空のデータを記入したり、適正に検査したように偽装するため架空の検査データを自動作成するプログラムを使ったりする不正があった。背景には、実質的な製品の品質に問題はないという正当化や、課題について「言えない、言わせない」という組織風土などがあったという。35年以上続いていた不正の例もあり、根本からの対策が求められている。
 同社は現在、全社を挙げて「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」の三つの改革に取り組む。問題発覚が早かった長崎ではこのうち、主に品質と組織の面でいち早く改革を進めてきた。
 ◆
 「問題発覚後、長崎製作所としてすぐに再発防止に着手した。現場が不適切行為を起こす必要のない仕組みや環境づくりを進めている」。麻生英樹長崎製作所品質保証部長は強調する。
 不正発覚後、長崎では試験室の増設や自動試験システムの導入など、試験機能そのものを強化。これまでの人手による記録や判定を自動化し、ミスや不正を未然に防ぐ仕組みに変えた。
 また、これまで長崎の各製造部にあった品質管理部門を「品質保証部」に一元化し、出荷の許可や停止の権限を製造部門から切り離した。加えて、本社直属の「長崎品質保証監理部」を新設。組織体制を見直し、品質管理のけん制機能の強化を図っている。
 一方、不正の背景にあるとされたコミュニケーション面もてこ入れする。日頃から意識してあいさつや感謝を伝え、会話やメールなどでは役職ではなく「さん付け」を使う。集会やミーティングなどで上司と部下が話す機会も増やした。部門の垣根を越え企業倫理について話し合うワークショップも開催。ハード、ソフト両面での改革を進める。
 ◆ 
 4月に就任した平國悟所長は主に家電部門出身。社会システム関連機器を扱う長崎では他部門出身が所長となる例はほぼなく、改革の旗振り役として期待される。平國所長は「お客さま、地域の皆さまの信頼信用を回復できるよう、皆と一丸となって改革を進めていく」と前を見据える。
 長崎製作所は1924年に創立し、来年で100周年。関係会社の社員も含めると千人以上が働く大所帯だ。不正の象徴的な存在ともなった長崎が、信頼回復に向けた改革の旗印となるか注目が集まる。


© 株式会社長崎新聞社