「0円空き家」に熱視線 上市町の登録制度 自治体、大学の視察続々

譲り受けた物件で娘をあやす冨宅さん=上市町北島

  ●「移住促進のモデルに」期待

 上市町が空き家の解消と移住促進を目指して取り組む独自の「0円空き家バンク」制度が、全国から注目を集めている。無償譲渡に限定し、バンク登録者と取得者の双方に補助金を交付する全国的にも珍しい制度で、成約数は昨年度の開始以降10件に達した。地域の活性化につながると、自治体や大学などから30件を超す相談や視察を受け付けており、町は空き家対策の新たなモデルになると期待している。

 0円空き家バンク制度は、町内で無償譲渡が可能な空き家を登録し、取得希望者に情報を提供する。当事者間で直接交渉し、譲渡が成約すれば、持ち主に相続手続きや不用品の処分費用として上限10万円、取得者に居住開始に向けた経費として定額50万円を補助する。

 対象となる空き家は、耐震基準を満たさない、道路から離れているなど、不動産業者が有料で扱うのは難しいと判断した物件のみとなる。空き家は放置すると老朽化が進み、倒壊などの恐れがある「特定空き家」につながる可能性がある。

 そのため、空き家がまだ住むことができるうちに改修を促し、移住や定住に結び付ける施策として、0円バンク制度を設けた。昨年度の開始以来、今月10日時点の登録は12件となり、10件が成約、富山県内外の11世帯31人が町に移住した。

 「一軒家に住みたくて応募した。近所の方の人柄も良く、不便さも全く感じない」。昨年9月、0円バンクを活用して京都市木津川市から妻と小学生の長女の3人で上市町北島に引っ越した自営業冨宅(ふけ)康幸さん(32)は満足げに語る。先月には次女が産まれ、4人家族で上市ライフを満喫する。

 譲り受けた物件は木造2階建ての住宅のほか、災害時の避難所として建てられたという別館と納屋で、延べ床面積は計262平方メートル。冨宅さんは「引っ越しにかかる費用は町の補助で賄えた。非常にありがたい」と感謝する。

 制度の活用が進む中、県外の自治体や地方活性化、人口減少を研究する大学から町への問い合わせが増えている。今月下旬には、埼玉県川島町と明治大政治経済学部の担当者が制度の視察に訪れる予定だ。

 上市町建設課の担当者は「人口減少が進む中、空き家対策はどの自治体も喫緊の課題。しっかりと対応し、地域のにぎわいにつなげたい」と話した。

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