最後の大旗に別れ 中島・お熊甲祭 高さ23メートル100年使用、担ぎ手不足で

大旗の解体を前に神事を営む関係者=七尾市中島町浜田

  ●浜田町会、中型を新調

 七尾市中島町で毎年9月20日に行われる七尾四大祭りの一つ、国重要無形民俗文化財「お熊甲祭(くまかぶとまつり)」を前に、約100年使われてきた高さ23メートルの大旗が解体された。中島町浜田町会が大正時代から掲げてきた枠旗で、これで高さ20メートル以上の大旗を担ぐ末社はなくなることに。担ぎ手の減少により同町会は15メートルの旗をすでに新調しており、壮年団員らは子どものころから親しんできた深紅の旗に別れを告げ、4年ぶりに通常開催される祭りへ意気込みを新たにした。

 お熊甲祭では、同市中島町宮前の久麻加夫都阿良(くまかぶとあら)加(か)志比古(しひこ)神社に、末社から枠旗や神輿(みこし)の行列が集結し、奉幣(ほうへい)式が執り行われる。約700メートル離れたお旅所「加(か)茂原(もわら)」で枠旗を地面すれすれに傾ける妙技「島田くずし」が目玉行事だ。

 浜田町会によると、以前は高さ20メートル越えの大旗を掲げる末社が多かったが、重さ1トンを上回る枠旗を支える担ぎ手の確保が難しくなり、年々減っていったという。

 近年は浜田町会のみ大旗を使っていたが、約70人の担ぎ手を町内のみで用意することができなくなり、2年前に中型の旗を新調。大旗の最後の巡行となる予定だった昨年の祭りは台風の影響で行列が中止となったため、処分前に町会のシンボルとなってきた雄姿を多くの住民に見てもらおうと、町内に枠旗を立て、おはらいの神事を営んだ。

 「旗じまいの神事」には町会役員や壮年団員ら約40人が参列し、久麻加夫都阿良加志比古神社の坂本翔禰(ね)宜(ぎ)が祝詞(のりと)を奏上、町会長の杉木勉さん(66)らが玉串をささげた。杉木さんは「大きい枠旗を出せなくなるのはやはりさみしい」と枠旗との別れを惜しんだ。枠旗は神事の後、若衆によって解体された。

 コロナ禍や台風の影響で中止となっていた枠旗や神輿の行列は、今年4年ぶりに復活する見通しとなっている。浜田壮年団の下田豊団長(40)は「大旗の最後を見て、若衆は気合が入ったと思う。新鮮な気持ちで頑張りたい」と話した。

© 株式会社北國新聞社