有峰でクマ被害多発 富山、11~13日に6件 登山者、車揺すられ食料奪われ 

クマによる被害が相次ぎ、閉鎖した折立キャンプ場=富山市有峰

  ●県が注意喚起

 富山市有峰の北アルプス・薬師岳(標高2926メートル)の登山口付近でクマが連日出没している。11~13日にかけ、男性が背後から襲われてかすり傷を負ったほか、食料やリュックを奪われるなどの被害6件が発生。登山者からは「車を揺すられた」などの体験談も聞かれた。連日大勢の登山者が訪れる中、クマは餌を求めて人の集まる場所に現れているとみられ、富山県が注意を呼び掛けている。

 「車が突然揺れて外を見るとクマが立っていた」。14日に薬師岳から下山した公務員紀井隆志さん(45)=京都府京田辺市=は興奮した様子で振り返った。

 クマと遭遇したのは12日午後5時ごろ。登山口近くの駐車場に車を止めて横になって休んでいた。車が揺さぶられて目を開けると、クマが車内をのぞくように立っていた。体長は約1.2メートルほど。数秒ほど待つと子グマ2頭を連れて離れていったという。

 県によると、クマの被害が相次いでいるのは有料の有峰林道の途中にある折立駐車場とキャンプ場。元々クマの生息地のため目撃は珍しくないが、被害が出ることはめったになかった。12日には登山口付近で食事していた男性がクマに下半身を引っかかれ、13日には別の登山者が駐車場近くに置いたリュックをクマに持ち去られた。

  ●キャンプ場閉鎖

 担当者は「人への警戒心が薄いのが危険。大けがする人が出ないか心配だ」と危機感を募らせている。管理者の北陸電力はキャンプ場を12日から閉鎖した。

 今夏は大勢の登山者が訪れ、約400台の駐車場は連日ほぼ満車。登山道でクマを目撃する人も多い。

 13日に登山口から入山した会社員佐々木吉純さん(23)=愛知県日進市=は1時間ほど歩いたところで子グマと遭遇。曲がり角を進むと約2メートルの距離にいた。刺激しないよう来た道を戻り、しばらくすると森の中に逃げていったという。「襲われなくて本当に良かった」と胸をなで下ろした。

 県によると、今年1~7月に県内で確認されたクマの目撃・痕跡情報は136件で、前年同期と比べて5件少なく、ほぼ例年並み。担当者は、夏は山菜や木の実が少ない時期とし「クマが餌を求めて動き回るので注意が必要だ」と強調した。クマ撃退スプレーを携帯するなど万一の事態に備える必要があるとした。

富山県が公開しているクマの出没情報地図「クマっぷ」。今年確認された出没場所が赤色の印で示されている(県提供)

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