《戦後78年》声で継ぐ戦争の記憶 朗読グループ・オリーブ 若い世代を語り部に 茨城 #戦争の記憶

オリーブのメンバーと朗読会を振り返る関口ゆきのさん、市毛真梨子さん(左から)=水戸市南町

戦争体験者の高齢化で語り部の減少が危ぶまれる中、茨城県内で活動する朗読グループが小中高生を読み手として朗読会を開き、若い世代の声で戦争の記憶をつないでいく活動を進めている。7月末、水戸市内で高校生2人が初めて語り部として朗読会に参加し、原爆に被爆した女子生徒の失われた青春や特攻隊員の無念さを声にして来場者に届けた。2人は今後も朗読会の参加に意欲を持ち、戦争の記憶を振り返る意義深さが心の中に響いている。

「醜いケロイドに悩み、ミニスカートの女性がどんなにうらやましかったか」

水城高3年の市毛真梨子さん(17)は長崎で被爆した当時14歳だった女子生徒の回顧を切なく、訴えかけるように朗読。続く水戸女子高3年の関口ゆきのさん(17)は、筑波海軍航空隊の特攻隊員が家族に残した手紙を「何から書き出していいのか分かりません」と読み上げ、悩める胸中を静かに伝えた。

朗読会を企画したのは、朗読グループ「次世代に伝えたい朗読と紙芝居のオリーブ」。2人は、オリーブのメンバーとともに水戸市南町2丁目の水戸証券ビルで開かれた朗読会に語り部として出演した。代表の見沢淑恵さんは「市毛さんは女子生徒の身になって、関口さんは戦地に赴く兵隊の感情を良く表現できていた」と手応えを語った。

演劇部に所属する市毛さんは、同級生を通じて見沢さんの活動に興味を持った。滑舌の心得があったものの、演劇と違って動かずに声だけで表現する難しさを実感。そこで、見沢さんの自宅を訪ねて直接指導を仰ぎ、台本も注意点を細かく書き込んだ。「原爆が落ちた光景を思い浮かべながら読むことを意識した」

関口さんは高校の図書委員長を務め、昼の放送で選んだ本の読み聞かせをしている。オリーブの朗読会を聞いたことから参加を考え、録音した音声データを見沢さんとやりとりし、会議ソフトも駆使して改善を重ねた。「隊員の境遇も知ると、読んでいて『つらかっただろうに』と思えた」と感慨深く語った。

オリーブは、戦争体験者から直接話を聞く機会がある中、近年は高齢化に危機感を持つ。県が公表する年齢別人口の推計によると、戦後60年に当たる2005年の4月時、戦争を経験した世代のうち、当時の70代は県内に約26万人いたが、20年4月時は85~95歳となって約11万7千人の半数以下に減少、23年4月時の88~98歳は約8万人となっている。

水戸空襲などの被災者を「語り部」として市内小中学校に派遣して講演する事業を実施する水戸市は、市内の戦争体験者13人が登録されているが、施設の入所や長時間の講演が難しくなったといった理由で、今年活動ができるのは7人に限られるという。

一方でオリーブは、各地での公演で、児童生徒から感想だけでなく読み手を演じたいという声もあり、見沢さんは「やる気のある子に環境をつくりたい」と積極的に声をかけることにした。7月下旬も高萩市で開催した際は、事前に市教育委員会に協力を頼み、意欲的な児童生徒が朗読した。

見沢さんは、読み手と聞き手の双方の心に残るよう、題材は読み手と当時、なるべく近い世代の証言を選んでいるという。「私たちができるのは読むこと。若い人が入りやすい形をつくって戦争を伝えていきたい」と話している。

© 株式会社茨城新聞社