不戦の願い継承 茨城県代表 吉田さん、父思い献花 滝さん念願、3世代で 全国戦没者追悼式 #戦争の記憶

茨城県を代表して献花した吉田敏子さん=日本武道館

終戦から78年となった15日、日本武道館(東京)で開催された全国戦没者追悼式で、茨城県の遺族は黙とうをささげ、犠牲となった家族をしのんだ。高齢化は進み、戦争の実像は遠のく。3世代で訪れた家族は「平和への思いを継ぐ」と不戦の願いの継承を誓った。

茨城県代表として県遺族連合会常務理事の吉田敏子さん(81)=牛久市=が初めて献花した。

父親の博さんは召集を受けて陸軍水戸歩兵第二連隊に所属し、ニューギニア・サラモアで戦死した。享年27。一人娘の吉田さんが生まれて1週間後に出征した。

父の顔は写真でしか見たことはないが、「寂しさはない。父親がいないのは当たり前だと思っていた」と振り返る。母も博さんの詳しい話をすることはなく、2人で「とにかく一生懸命に生きてきた」。

20歳を過ぎた頃、戦友の男性が父の最期を教えてくれた。山で敵に撃たれて倒れたという。

遺骨は今も現地に眠る。遺族会の活動で3回、ニューギニアを訪れた。飛行機の中から最前線となった山を見た。「とても標高があり、人が入れる場所ではないと思った」。父を思い、機内で合掌した。

全国戦没者追悼式には毎年出席してきた。「ここに来ると、父が上から見てくれている気がする」。父親のぬくもりを感じながら、花をささげた。

茨城県遺族の中には3世代での参加も見られた。同連合会副理事長の滝一司さん(84)=北茨城市=は4歳の時、父の司さんがニューギニアで戦死した。追悼式には今回初めて娘夫婦と孫2人を誘い、念願がかなった。「若い世代への継承が欠かせない。孫も大きくなり、式に出てもらいたかった」と話す。

孫の高校1年、石川遥久さん(15)=水戸市=は「戦争体験者による平和への思いを後世に残さないと、同じ過ちを繰り返しかねない。思いをつなぐことが大事」と話し、祖父の願いを引き継いだ。

妹の小学6年、凜花さん(11)は茨城県出席者の中で最年少。ウクライナ情勢を踏まえ、「日常は戦争で壊れる。日頃から戦争や平和のことを考えて生活したい」と話し、正午の時報に合わせて手を合わせた。

■茨城県遺族、52人参列

全国戦没者追悼式に茨城県の遺族52人が参列した。新型コロナウイルス感染防止のため4年連続で縮小開催となったが、昨年(18人)からは増加した。

出席者の半数は戦没者の子どもが占めた。多くは80代で、最年長は89歳。未成年の参列が再開され、最年少はひ孫に当たる11歳だった。

茨城県の遺族を代表し、県遺族会連合会の常務理事、吉田敏子さん(81)=牛久市=が献花した。

岸田内閣の閣僚として、茨城県選出の永岡桂子文部科学相が参列し、献花した。

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