喧嘩で「あなたが理解できない」と言われたら…振り回されないために考えたいこと

他人ならば、自分と意見が合わなかったりすれ違ったりして衝突が起こるのも仕方のないこと。

こちらは丁寧に気持ちを伝えているのに、相手がかたくなで「あなたが理解できない」と突っぱねる姿を見ると悲しくなりますよね。

話し合いが続かない、仲直りしたければ相手の言い分を受け入れるしかない場合、どう対応するのが自分のためなのでしょうか。

「あなたが理解できない」に隠された心理とは?

「こちらを知る気がないのだ」と受け取ってみて

筆者も経験がありますが、些細なすれ違いから言い合いになり、こちらは仲直りがしたいからこそ自分の気持ちを言葉にして伝えているのに、「あなたが理解できない」と一方的に”宣言”されると、それ以上何を言えばいいのかわからなくなります。

こんな強い言葉は拒絶と感じられ、それをぶつけられる自分を見れば悲しくなるし、相手を理解することも諦めようと思うものです。

なかにはこれを言われて「私が悪いのだ」「理解させる力がないのだ」と自分に非があると感じる人もいますが、本当にそうなのでしょうか。

客観的に見てみると、わかってほしいから言葉を尽くして気持ちを伝えているのに、それを「理解できない」で片付けてしまえる相手は、そもそも「こちらを知る気がない」ともいえます。

相手も本当に仲直りを考えているのなら、こんな言葉を出すことはできません。

「あなたが理解できない」は「これ以上あなたの気持ちを受け取るつもりはありません」と同意であり、これを言ってしまうとこちらの気持ちが萎えると想像がつくからです。

相手が傷つくとわかっていて拒絶の言葉を吐けるのは依存であり、「理解できない」と言う人は「理解させるのはそっちの役目」と思っている可能性もあります。

「こちらを知る気がないからこれが言えるのだ」と思うこと、相手の強い表現に引きずられずその姿を距離をとって見ることが、選択を間違えない最初です。

「理解できない」はコミュニケーションの放棄と同じ

こんな場面は男女の仲でもよくあって、多くの場合何を言っても不機嫌さがにじみ出るきつい言葉ばかり返してきたり、質問をしてもまともに答えず「こっちが悪いということか」と一方的に被害者になりたがったり、相手は「怒り」に囚われています。

その挙げ句に出るのが「あなたが理解できない」であり、それ以上話を続けるのであればどうしてもこちらが相手に「理解してもらうための労力」を割くことが必須になります。

たとえば、意見が合わず同意に至らないやり取りが続き、それを見て冷静に「ちょっとあなたの考え方は理解できないから、考える時間がほしい」と返すのであれば、冷却期間を置く提案もできますが、多くのケースでは片方が一方的にこちらの気持ちを拒絶します。

それは理解するコミュニケーションを放棄するのと同じで、仲直りが叶うことはありません。

先の段落で書いた通り、これを言える相手は「理解させるのはそっちの役目」と思っている可能性は高く、極端にいえば「自分との仲を続けたいのであればそっちが努力して」と押し付けているのと同じです。

片方だけが理解してもらうための労力を割くことは、対等ではありません。

こちらを知る気のない相手にどんな言葉を届けても、結局は相手の機嫌しだい、わかってもらうはずが気がつけば「相手の機嫌が直るように下手に出ている」状況もよく聞きます。

それが「理解できない」と放った側の狙いかもしれず、こんな場面を受け入れてしまうと次に衝突が起こったときも相手は同じく不機嫌さでこちらをコントロールする可能性を、忘れてはいけません。

悪意のない相手には、考えることを促してみる

「あなたが理解できない」と伝えることを、「自分の気持ちを正直に言った」「これが本音」とする人もまた大勢います。

違う人間同士なら片方がどんなに努力しても気持ちが伝わらないのは仕方のないことで、話し合いに疲れてこんな言葉を悪意なく吐いてしまう人もいるでしょう。

一時的な怒りに囚われて拒絶でしかその場を乗り切れない人も見聞きしますが、こんなときは「じゃあ考えてみてね」と促すのが最善です。

問題は「そもそも理解する気があるのかどうか」であり、相手がこちらと向き合う気があるかを知るためにも、考えることを促していったん話し合いをやめます。

「考えてみてね」と言われたら相手はそうするしかなく、「どうして考えないといけないのか」とそれすら拒否したり、「理解できないのは仕方ないだろう」とその自分をよしとできたりする人なら、お付き合いを考え直すのが正解です。

関係は対等であり、コミュニケーションの労力は互いに割くのが誠意です。

つながりを本当に大切に思うのなら、「考えてみてね」と言われたら自分が吐いた言葉が返ってきたことを知り冷静さを取り戻すはずで、心と状況を仕切り直して次の話し合いができます。

理解には話し合うこと、会話することが不可欠で、お互いにそれを避けない姿勢が居心地のいい関係にはあります。

相手に「考えることを促す」のは、理解のための「コスト」はふたりが同時に負うものだと知ってもらうため。

理解させてもらう側にいるのではなく、みずからも知ろうとする姿勢があるかどうかが重要です。

衝突したときこそ、自分が対等を忘れない姿勢が不毛な依存を避けられます。

「縁が続く人」の特徴とは?

普段どれだけ仲がよくても、一度衝突するととことんまで傷つけあって断絶以外の道はないような関わり方を見せてくる人とは、縁は続きません。

好きだからと自分の気持ちを曲げてまで相手に「自分を理解してもらうための労力」を差し出し続けると、それが当然となり相手はいつまでも何かあるたびに不機嫌さでこちらが折れるよう仕向けてきます。

喧嘩をしてもきちんと仲直りまで進める、問題の解決と改善が叶う人は、「愛情の出し惜しみをしない」という特徴があります。

友情であれ恋愛感情であれ、「あなたを好きな自分」の実感を掴んでいる人は、衝突が起こっても続けたい意思が途切れないため逃げ出すことはありません。

縁が続くのはふたりが「関係を続けたい」と思うからこそで、それを片方の負担にする、「続かせたいのならそちらが努力するべき」と思っている人は、相手を好きな自分に自信がない証拠ともいえます。

相手を好きな自分に胸を張れないから「理解できない」で放っておいてしまえるのであり、それは当人の問題です。

「理解させてもらえなかった」から関係が終わったのではなく、「理解する努力をしなかった」が真実であり、後味の悪い幕切れの原因を片方が負うことはありません。

理解にはふたりの努力が必須であり、お互いさま。

こちらにできるのは誠意を持って自分の気持ちを伝えることであって、「理解できないと言われた自分」を過度に重く受け止めるのはやめましょう。

同時に、自分もまた「理解してもらう努力をしたのかどうか」を、冷静に振り返る必要があります。

言い方を変えてみる、相手の言葉をもう一度考えてみる、コントロールできるのは自分のやり方のみであって、そこに力を尽くすのが誠意です。

喧嘩になるとすぐ「あなたが理解できない」と口にする人は、コミュニケーションを放棄して「理解させてもらう側」に立とうとしている可能性を、忘れてはいけません。

「考えてみてね」と伝えるのは理解させるコストを必要以上に引き受けないためであり、伝えた後の相手を見れば関係への真剣度が見えてきます。

衝突するときは互いの理解を深める機会、コントロールではなく愛情で関係が続く選択をしたいですね。

(mimot.(ミモット)/ 弘田 香)

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