全国高校野球 理容店主「優勝目指して」 茨城・土浦日大野球部員行きつけ かすみがうら

土浦日大の選手が通う「理容ツカモト」の店主、長谷川典子さん。店内には選手の集合写真やうちわが置いてある=かすみがうら市坂

茨城県代表として夏の甲子園大会を戦う土浦日大。同県かすみがうら市中台の「かすみがうら桜グラウンド合宿寮」に程近い「理容ツカモト」の店主、長谷川典子さん(50)は同校野球部の大ファンだ。厳しい練習に耐え、礼儀正しい選手たちの姿に、選手行きつけの店とご近所さんの両面で接してきた。「このまま勝ち進んで優勝を」と選手たちの活躍に笑顔を見せる。

店の窓には「祝甲子園出場」のポスター、店内には土浦日大のうちわやメンバーの集合写真が置かれる。創業40年の店は、寮から徒歩数分の同市坂にある。土浦市の本校から15キロ近く離れた農村部で、数少ない校外の「オアシス」として選手たちが足しげく通う。

髪を整えながら選手と交流する長谷川さん。茨城大会決勝の翌日も、甲子園メンバーをはじめ、選手たちが来店した。殊勲の決勝打を放った主軸の松田陽斗一塁手(3年)は「きのうは眠れなかった」と漏らしたという。松田選手は甲子園でも本塁打を打つなど活躍する。

野球部は「自律」がモットー。髪形は、塚原歩生真主将(同)のように丸刈りもいるが、選手の自主性に任せられている。

長谷川さんは、帽子からはみ出ない程度の長さを基本に、6~3ミリのバリカンを入れる。甲子園の開幕戦勝利後、ツイッター(現X)には「自由な髪形」「おしゃれ」「今風」と書き込みが相次いだ。好意的な反応に「ああ、良かった」と胸をなで下ろす。

寮は長谷川さんが小学生だった1982年に立地。親しみを込め「日大さん」と呼ぶ。歴代の選手たちが、礼儀正しくお辞儀し、厳冬の朝も日の出前から練習する姿などを長年見てきた。

選手たちは、「あと何人待ち」などと連絡を取り合いながら効率的に来店する。長谷川さんは「床屋さんでのチームワークもいい」と笑う。

トレーニングで屈強な体をつくっても、選手たちの態度は謙虚で、腰が低い。「私の前では『優勝します』とは言わない。『レギュラーになった』と自慢する子もいない」。その人間性に触れ、「ますます応援したくなっちゃう。ぜひ優勝してほしい」と語る。

近所から来店した常連客たちも「頑張っているよねー。優勝してほしい」と、「日大さん」の真夏の活躍に目を細めていた。

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