五島・嵯峨島「オーモンデー」中止 踊り手集まらず 肩落とす島民 継承の難しさが浮き彫りに

オーモンデーの中止を決め、腰みのなどを片付ける吉田町内会長(左)ら=五島市、嵯峨島

 長崎県五島市三井楽町の嵯峨島(さがのしま)で、お盆の伝統行事「オーモンデー」(国選択無形民俗文化財)が14日、踊り手が集まらず中止になった。新型コロナ禍の影響で4年ぶりに開催予定だった。島民によると、雨天以外の理由で実施できないのは異例という。人口減少による伝統文化の継承の難しさが浮き彫りになった。
 「以前は、14日には自然と人が集まっていたのだが」。町内会長の吉田武雄さん(67)は肩を落とした。この日朝、前日に続いて島内放送で参加を呼びかけたが、集まったのは5人ほど。その場で中止を決めた。
 「これで(オーモンデーは)終わりになるのかな」。島外から帰省していた踊り手の山下彰弘さん(19)と市立嵯峨島小中の校務員、吉田政恒さん(49)は残念そうに、準備していた腰みのなどを片付けた。
 嵯峨島は、福江島の西約4キロの二次離島で、人口は58世帯94人(7月末現在)。オーモンデーは古くから島に伝わる念仏踊り。色鮮やかな衣装に腰みの、金銀など色とりどりの切り紙で飾り付けた「かぶと」を着用した踊り手たちが、歌い手とかねのリズムに合わせ、太鼓を鳴らして厳かに舞う。毎年8月14日、島内の寺や墓地、初盆の民家の庭先などで披露する。通常は踊り手10~12人、かね持ち2組4人で構成している。

2015年8月に青年たちが披露したオーモンデー

 人口減少により、帰省者の助けを借りるのが必須。だが今回は、高校生が卒業して市外に出たことや、他の地元出身者も仕事などで都合が合わず集まらなかったという。コロナ禍による中断前も踊り手は徐々に減っていたが、今回はさらに少なく断念した。初盆の家庭には、武雄さんが訪ねて披露できないことを伝え、わびた。 
 同市には、福江の「チャンココ」など各地で盆供養の踊りが受け継がれている。オーモンデーは裏声と地声を交えた「ヨーデル」に似た哀調漂う歌唱や、南方系の装い、独特の振り付けが特徴だ。
 島民でつくる保存会は、嵯峨島小中の男子の児童生徒に教え、運動会で成果を披露するなど継承に力を入れてきた。ただ現在、男子の児童生徒は2人しかいない。
 「盆にオーモンデーの歌やかねの音が聞こえないのは寂しかね」。複数の島民が口にした。保存会の会長も務める武雄さんらは「来年は島外に住む出身者に早めに呼びかけたりしながら、何とか人を集めたい」と語った。

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