「月刊みと」創刊50年 街の笑顔伝え600号 食やイベント、時代映す 茨城

創刊50年を迎えた「月刊みと」のバックナンバーを紹介する編集長の十津川良子さん=水戸市八幡町

茨城県水戸市のタウン情報誌「月刊みと」が1973年の創刊から50年を迎え、8月号で600号を重ねた。にぎわうバブル期の中心街、東日本大震災、コロナ禍など時代の変遷を、グルメやイベント情報で映してきた誌面は、街で強く生きる人々の笑顔で飾られてきた。編集スタッフは「茨城の心地よさを感じ、楽しく過ごせる情報を届けたい」と今日も街を巡る。

水戸の中心街から少し離れた同市八幡町。発刊元のふじ工房は、応接室の本棚いっぱいに「月刊みと」のバックナンバーが並ぶ。編集長を務める十津川良子さん(58)が、別室から創刊号のコピー誌を取り出した。

創刊号は県内初のタウン情報誌「ミニマガジンみと」として1973年1月に発刊。現在のA5判よりやや小さいB6判で、横型だった。

誌面はヒョウ柄のコートに身を包んだ女性やバッグといったファッションをはじめ、お薦めのボウリング場や喫茶店の写真を載せ、「昭和」らしさが漂う。笠間焼作家のエッセーなどもあり、当時から扱う情報は水戸に限らなかった。

十津川さんが入社したのは昭和期が終わりに近づいた1986年。「大学時代、手に取って、地域の情報誌がない中、やりたいと思って入った」という。当時はバブルの好景気。「水戸の中心街は人とぶつからないと歩けないほど。広告も誌面に入りきらない状況だった」と懐かしむ。

十津川さんが大事にしてきたのは写真の見栄え。「おいしそうな写真をいかに載せるか。『食べに行こう』と外出のきっかけになるように、1冊あれば1カ月県内を楽しめる誌面を目指した」と話す。

そんな毎月のグルメを追う中、2011年4月号の締め切り前日に起きたのが東日本大震災だった。飲食店やイベントは軒並み休業、中止し、4月号の発行を断念。被災地支援に向かう団体や運行会社の活動を紹介する4.5月合併号へと切り替わった。「助け合いのために立ち上がって、みんな強いんだと人の〝力〟を感じた」と、笑顔を載せ続けた。

新型コロナウイルス感染拡大の影響は、人が集まることができないといった未曽有の事態に。広告料なしでテイクアウト情報を掲載して飲食店を支えたが、現在も「出かけずに食べる習慣ができてしまった」とダメージは尾を引いている。

それでも、「茨城にはこんな人がいるんだと知ってほしい」と、精力的に活動する人を追い続けている。近年は、水戸やつくばの市街地ではなく、大洗や郊外にUターンして起業や活動を始める人を取り上げる機会が増えてきた。

十津川さんは「これからも、人を知るきっかけづくりをしていきたい」と、新たな「笑顔」を探している。

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