エステバン・グエリエリが新型『トヨタ・カローラGRS TCR』に搭乗。世界戦併催南米ラウンド出場へ

 アルゼンチン出身のツーリングカー使いとして、長年ホンダ陣営で活躍を演じてきたエステバン・グエリエリが、ひさびさにTCR規定モデルをドライブすることが決定。新生TCRワールドツアーにも組み込まれるTCRサウスアメリカ・シリーズのうち、今週末の8月18~20日にウルグアイで開催されるエル・ピナールと、連戦予定の8月25~27日のアルゼンチン、サンルイス戦の2ラウンドで『トヨタ・カローラGRS TCR』のステアリングを握る。

 そして今季2023年のTCRサウスアメリカで選手権首位を行く、18歳の新鋭イグナシオ・モンテネグロはイタリアに飛び、こちらもニューモデルである『FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR』の初テストを完了した。

 かつてのWTCC世界ツーリングカー選手権から、後継シリーズたるWTCR世界ツーリングカー・カップまで、同郷ネストール・ジロラミとのペアで“シビック使い”として名を馳せてきたグエリエリだが、今回のTCR復帰に際してはTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)が開発、承認申請を担当したトヨタ製モデルに乗ることがアナウンスされた。

 今季の主戦場をWEC世界耐久選手権に移し、移籍先のヴァンウォール・レーシングチームとともに最高峰のハイパーカークラスで戦っているグエリエリは、地元アルゼンチンのツーリングカー界で伝説として知られるエルネスト・“ティト”・ベッソーネが監督する新設チーム、ブラットン・ティト・ベッソーネ・チームに合流。チームはTCRサウスアメリカの残るシーズンに向け、このクルマをドライブするメンバーをさらに追加で迎え入れる予定だ。

「この素晴らしい挑戦の機会にとても興奮している」とTCR復帰への意気込みを語るグエリエリ。「ここ数カ月間、僕はTCR規定のマシンに乗っていなかったが、非常に多くの経験を積み、多くのレースに参加してきたから、このタイプのマシンで国際レベルの競技へ戻れることにワクワクしているんだ!」

 ウルグアイに続き、地元アルゼンチンで開催されるふたつのイベントに参加する元ホンダのエースは、新規車種でTCRワールドツアーの“元同僚”たちとレースを戦うことになる。

「また彼らと戦えるのも楽しみだし、それを実現するにはこれ以上の方法はないだろうね。クルマはほぼ完全な新車だし、アルゼンチンに行ってテストをするつもりだ。そこで(テクニカルチーフの)クリスティアン・ガラッソと(チームマネージャーの)ティト・ベッソーネと協力してベストを尽くすつもりだ」と続けたグエリエリ。

「この素晴らしいプロジェクトを立ち上げてくれた(チームオーナーの)ディエゴ・グティエレスとティトにとても感謝しているし、成功させるために全力で取り組むよ」

かつてのWTCC世界ツーリングカー選手権から、後継シリーズたるWTCR世界ツーリングカー・カップまで、同郷ネストール・ジロラミとのペアで”シビック使い”として名を馳せてきたエステバン・グエリエリ(右)
TOYOTA GAZOO Racing Argentina(TGRA)が開発、承認を担当した『トヨタ・カローラGRS TCR』は、今季から本格デリバリーが開始された
WTCRではALL-INKL.COM Münnich Motorsportに所属。最終年までシビックで戦い続けた

■ジロラミのサポートを受けFL5型シビック・タイプR TCRをドライブ

 そう名前の挙がったベッソーネは、アルゼンチン国内では旧TC2000を皮切りに、シルエット選手権のツーリスモ・カレテッラやGr.N準拠のツーリスモ・ナシオナル、そしてTOP RACE V6など主要カテゴリーでタイトルを獲得してきた“レジェンド”であり、現代のツーリングカー・マイスター大挙輩出の礎を築いたドライバーでもある。

「このプロジェクトが実現してとてもうれしいよ」と、今回はグエリエリ起用を実現させた65歳のベッソーネ。「これは関係者全員による多大な努力の成果であり、グエリエリのような国際的な経験を持つドライバーを惹き付けることができたのは素晴らしいことさ。準備をする時間はあまりないが、ウルグアイのメルセデス・サーキットで開催されるエル・ピナール戦の数日前には、なんとかクルマをシェイクダウンできるだろう」

 一方、今季のTCRサウスアメリカですでに4勝を挙げ、堂々のシリーズリーダーに君臨するホンダ陣営スクアドラ・マルティーノ所属のモンテネグロは、イタリアはロンバルディア州にある音楽都市クレルモのサーキットに赴き、新型シビックでの最初のテストセッションを実施した。

 期間中はイタリア、JASモータースポーツのエンジニアとともに、同郷の大先輩ですでにTCRワールドツアーでFL5型を走らせるネストール・ジロラミのサポートを受けた若手有望株は、新しいクルマにもすぐに適応し、競争力のあるラップタイムを記録することができたという。

「このテストに招待してくれたJASモータースポーツと“Bebu(ジロラミの愛称)”にとても感謝している。たくさんの作業とミーティングがあり、とても忙しい2日間ではあったけど、それが僕らの将来に大きな期待を与えてくれた」と語ったモンテネグロ。

 一方、新型車両の開発も担当したJASモータースポーツのTCRプロジェクトリーダー、マッズ・フィッシャーも「明らかに、イグナシオは世界中のTCR競技において最も若い天性の才能のひとりだ」と、そのパフォーマンスを高く評価した。

「テストを通じて彼は非常に良い仕事をしてくれた。我々は彼がJASファミリーの一員として、南米で確固たる評判を築いていることをうれしく思っている。今後数年間、彼とさらに協力できることを楽しみにしているよ」

「このタイプのマシンで国際レベルの競技へ戻れることにワクワクしているんだ!」と意気込むグエリエリ
18歳の新鋭イグナシオ・モンテネグロはイタリアに飛び、こちらもニューモデルである『FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR』の初テストを完了した
「たくさんの作業とミーティングがあり、とても忙しい2日間ではあったけど、それが僕らの将来に大きな期待を与えてくれた」と語ったモンテネグロ

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