伝統行事の中止

 猛暑に台風と、この夏も気象に顔をしかめる日が多いが、顔がほころぶこともいくらか増えた。伝統行事を「4年ぶりに開催」という知らせに触れた時がそうだろう▲ごく最近の「4年ぶり」を紙面で探してみる。風流踊(ふりゅうおどり)の「平戸のジャンガラ」は、平戸市内の7地区でも4年ぶりに行われ、この夏にやっと「コロナ禍前」に戻った夏祭りも多い▲「4年ぶり」がかなわなかった行事もある。五島市三井楽町の嵯峨島(さがのしま)で、お盆の伝統行事「オーモンデー」が中止になった。踊り手が集まらなかったという▲帰省する人の力を借りてきたが、今年は帰省の都合がつかず、断念したらしい。保存会は「島の出身者に早めに呼びかけたりして」、来年は何とか開きたいとしている▲24年前に出された本「長崎県文化百選 祭り・行事編」(長崎新聞社刊)は100の伝統的な芸能や行事を紹介し、その中に念仏踊りの「オーモンデー」もある。調べてみると、コロナで中断を挟みつつも、100の行事のうち全く途絶えた例は見当たらない▲数知れない先人が守ってきた伝統行事の多くがいま「担い手不足」に直面している。知恵をどう紡ぐか。伝統行事の継承といい、戦争体験の語り継ぎといい、8月は「受け継ぐ」ことの大切さ、そして難しさをかみしめる時がとりわけ多い。(徹)

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