「お母さんを甲子園に」夢かなえ本番で結果 八学光星(青森代表)・青木

親子の夢だった甲子園でプレーする青木に声援を送る母宏恵さん(右)と弟龍仁君

 16日の全国高校野球選手権3回戦に勝利し、3大会ぶりの8強入りを決めた八戸学院光星。大阪府出身の外野手青木虎仁(こうじ)(18)=3年=は、3人きょうだいを一人で育ててくれた母宏恵さん(43)への感謝の思いを胸に打席に立った。結果は2安打2打点の活躍。スタンドで見守る母に、立派に成長した姿を見せた。

 幼少期、野球が大好きな母と一緒に甲子園球場で試合を観戦した青木は、球児たちの気迫あふれるプレーを間近で見て感銘を受けた。「僕もここで野球をやりたい。僕がお母さんを甲子園に連れて行くね」。そう母に伝え、その日から「甲子園」が親子2人の夢となった。

 ひとり親となり、家計を支えるため昼夜を問わず働き続けた宏恵さん。「忙しくても苦にならなかった」と帰宅後は泥だらけになった練習着を洗うなど、野球に打ち込む青木を支え続けた。ただ、青木は中学時代は「ちゃんと授業も受けず、真面目な生徒じゃなかった」と打ち明ける。学校から何度も呼び出しを受け、先生に頭を下げ続けた母に「働き詰めなのは分かっていたのに、本当に迷惑ばかりかけてしまった」。

 だが、「お母さんを甲子園に連れて行く」という夢は揺らがなかった。練習にのめり込み、進路選択時には、約10校から声がかかるほどの選手に成長した。家庭を思い、悩んだが「どこに行ってもいいんだよ。応援するから」という母の言葉に背中を押された。

 その中でも2019年、武岡龍世(現・東京ヤクルト)らを擁し8強入りした甲子園をテレビで見て「ビビッときた。急に行きたくなった」という八学光星に進学先を決めた。昨夏の県大会もメンバー入りし、念願の甲子園出場を決めたものの、地区大会から2人減る甲子園の登録選手制度により、惜しくもメンバー外。今夏はスタメン入りを果たし、ようやく母を甲子園に連れてくることができた。

 仕事で多忙な宏恵さんは今回の甲子園で初めて、八学光星のユニホームを着てプレーする青木を直接目にした。16日の3回戦。青木は初回に中前に適時打を放つと、五回にも右翼線を破る適時二塁打を放ち、勝利に貢献。宏恵さんは約束の舞台で躍動する青木の姿を見て「甲子園に連れてきてくれてありがとう。ずっと大好き。虎仁の一番のファンだよ」と目を細めた。

 青木は以前、打撃不振に陥り宏恵さんに相談したことがあった。「やるならとことんやれ。どんな結果でも野球を楽しんだら、いい結果がついてくるから」という言葉に救われたという。「何不自由なく育ててくれて、つらいときも支えてくれた」と感謝の言葉を口にしつつ「試合中も(左翼の)守備位置からスタンドにいるお母さんと目が合って、緊張がほぐれた。やっとお母さんとの夢をかなえられた」と誇らしげに汗を拭った。

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