県内、猛暑続き畜産業苦慮 ケッコー暑い、モ~たまらん 食欲減退、卵小さく乳量減

猛暑の中、牛舎で過ごす牛=小矢部市内の牛舎

 猛暑が続く富山県内の畜産関係者が鶏や牛の夏バテ対策に苦慮している。店頭で卵価格の高止まりが続く中、県内の鶏の約7割、約60万羽を飼育する小矢部市では酷暑による食欲減退で産む卵のサイズが小さくなった養鶏業者も。富山市では暑さで牛の乳量が減った牧場も出てきた。電気料金や飼料代の高騰もあり、真夏の経営が厳しさを増している。

 「暑さで食欲がなくなり、食べるえさの量が減って、自然と産む卵も小さくなる」。小矢部市で最多の約38万羽を飼育する津沢産業の飛渡(とびと)勝矢社長(46)はこう腕組みする。

 同社の1日当たりの産卵数は約28万5千個。1個当たりの卵の重さは例年、平均で約63グラムなのに対し、今夏は約61グラムにとどまり、SやMなど小ぶりなサイズの占める割合が増えた。えさは1羽につき1日当たり約115グラムを食べるが、今夏は約105グラムしか食べなくなっている。

 汗を分泌する汗腺のない鶏は、うまく体温調節ができない。鶏舎内の温度が35度を超えると体調不良を起こして死ぬ場合もある。

 暑さ対策は不可欠で、鶏舎に断熱材を貼ったり、温度が一定の高さになるとミストが噴霧されるシステムを導入したりしている。

  ●電気料、飼料高騰にも苦悩

 ただ電気料金の値上げが経営を圧迫。津沢産業の場合、7~9月の電気料は例年300万円程度に対し、今年の7~9月は400万円を超え、約1.5倍の450万円に迫る勢いだ。

 ウクライナ情勢や円安の影響で飼料も高騰し、1トン当たりの価格は数年前の約4万円から、現在は約8万円で2倍近くに跳ね上がった。飛渡社長は「鶏に影響が出ないよう最大限の対応を取りたい」と話す。

  ●受胎率の低下懸念

 乳牛を大小合わせて約140頭飼育する富山市の竹田牧場では、暑さのため乳量の減少が見られる。ファンやミストを活用し、牛へのストレスを軽減する努力を続けるが、竹田満裕代表(48)は「今できる暑さ対策を全て実施している。猛暑が今後も続くと、何をすればいいのか」と苦しい胸の内を明かした。

 繁殖牛など約320頭を小矢部市直営で管理する稲葉山牧野(ぼくや)(同市)では、暑さでメスの受胎率の低下が懸念され、夏以降の肉牛の出荷計画に影響が出る可能性も出てきた。既に夏バテや熱中症とみられる牛が4~5頭確認された。脊戸栄場長(50)は「職員の長年の経験を生かし、適切な維持管理を続けていきたい」と力を込めた。

  ●県内、鶏卵価格高止まり「値上げやむなし」

 ロシアのウクライナ侵攻による飼料価格高騰や鳥インフルエンザの流行などの影響で、鶏卵の価格は高止まりの状況が続いている。

 富山、石川などに52店舗のスーパーを展開する大阪屋ショップ(富山市)は鶏卵の小売価格を引き上げた。毎週土曜の特売日は1パック(10個入り)55円で販売していたが、1年ほど前から段階的に値上げし、現在は同158円となっている。担当者は「値上げはやむを得ない。さらに状況が悪化しないよう願うしかない」と話した。

 鶏卵大手卸「JA全農たまご」(東京)によると、卵の月平均卸売価格(東京市場、Mサイズ1キロ)は、今年8月が284円で前年同月と比べて80円高い。昨年4月以降は200円を下回らず、今年4、5月は1993年以降で最高の350円となった。

店頭で価格の高止まりが続いている卵=富山市内のスーパー

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