核ごみ請願

 〈「核のごみ」で地域振興なんて邪道もいいところ、発想が間違っている、「貧すれば鈍する」とはこのこと〉と外野席から良識派っぽいコメントをするのは、違うと思う。しかし、その逆にも率直な抵抗を感じる▲逆-。〈「文献調査」を受け入れることが処分場の建設に直結するわけではないのだ、もらえる交付金はもらっておけばいい〉…もちろん、こんな要約では極端すぎるのだろうが▲原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分場候補地選定に関連して、対馬市議会の特別委員会が、最初のステップである文献調査の受け入れを求める業界団体の請願を採択した。僅差の採決結果は地域社会の苦悩をそのまま物語っているように思える▲選挙で選ばれた代表者でつくる議会がその社会のルールを定め、物事の進め方を決めていくのが「議会制民主主義」だ。その意味では“地域の意思”がいったん示されたと見るべきなのだろう▲ただし、通常の予算案や条例案とは違って、核のごみの受け入れ先として手を挙げるかどうか-の決断は、限られた人数で構成する議会の手には余るような気もする。広く市民の意思を問う機会が必要かもしれない▲「地方自治は民主主義の学校である」…簡単には答えが出せそうにない難問に対馬の“学校”が直面している。(智)

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