子どもの預け先 悩む家庭に寄り添う 長崎の民間学童「遊学舎うみとそら」 マナー教育にも力

夏休みの体験学習について話し合う堀井さん(左)花谷さん夫婦=長崎市、遊学舎うみとそら

 勉強もスポーツもマナーも指導してくれる「欲張り」な民間学童保育が長崎市本原町にある。運営する夫婦は、さまざまな制約で公設学童に入れない子どもや短期間だけ預けたい保護者の切実な思いに応えたいという。それが「遊学舎うみとそら」だ。
 2日午前9時ごろ、さっきまでわいわい遊んでいた子どもたちが小さな机をきれいに並べ、夏休みの宿題に取りかかった。「オッケー、よくできました」「左手も添えた方が書きやすいよ」。代表の堀井桂子さん(53)が声をかけて回る。「みんなで勉強している時の方が影響されて、はかどっている」とほほ笑んだ。
 地元出身の堀井さんは県外の大学で教育を学んだ後、大阪府内の塾で講師をしていた。夫の花谷篤房さん(57)は大阪出身。8年前、娘と3人で長崎に移住。堀井さんは公設学童で施設長を3年半務めた。
 ほとんどの公設学童は、共働きでなければ預けられない、年間契約しかできない、といった制約がある。多数を受け入れ過ぎても目が行き届かなくなる。堀井さんは、自分が断るたび、諦めて帰る保護者を見送るうちに「もっと子ども一人一人と接したい」と思うようになった。退職後の今年3月、夫と「遊学舎うみとそら」を開いた。
 放課後、学校に車で子どもたちを迎えに行く。学習後に振る舞う手作りおやつが大人気。学校が休みの日は体育館を借りてバドミントンやドッジボール。競泳指導経験がある花谷さんが体の動かし方を教える。図書館や美術館に出かけ、夏休みには臨海合宿も。現在の入会者数は約40人。1日15人前後が利用し、少人数なので個々に合った学習や体験を提供できる。
 子どもの預け先に悩む家庭からの相談は多い。堀井さん自身、子育てをしながら「親だけでは限界がある」と実感したからこそ、寄り添う民間学童が必要だと考える。
 夫婦によると、大阪府では、それぞれ得意分野がある民間学童が普及し、子どもの興味に合わせて選べる。一方、長崎県には民間学童がほとんどなく、通学先の校区で公設学童を決めることが多い。夫婦は「同じ小学生なのに、地域が違えば選択肢が限られる」現状を変えたいと市近郊からも受け入れ、長崎大などの学生ボランティアが支えてくれている。
 教えるのは、勉強や運動だけではない。親に代わり真剣に、時には厳しく。花谷さんは自動車販売店で社員の教育や研修に携わった経験から「社会に出た時に必要」とマナー教育にも力を入れる。面談で保護者にこうした理念を理解してもらうことも入会条件としている。
 ある小学3年男子は4月に公設学童から移った。よくしゃべり、汗だくで駆け回る姿を見て母親は「安心して楽しく過ごせる場所」と目を細める。
 「一人一人と人間関係をつくっている」と花谷さん。もめたりしながらも日々成長する彼らの姿を見るのが何よりうれしい。堀井さんは「放課後の時間を大切にしたい。子どもたちの第二の家になれたら」と語る。
 「遊学舎うみとそら」は日祝日定休。開所時間は平日放課後~午後8時、土曜と学校の夏冬休み期間中は午前7時半から。

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