東北の高校野球、躍進の軌跡追う 田沢さん(鶴岡出身)書籍出版

新著「104度目の正直 甲子園優勝旗はいかにして白河の関を越えたか」

 熱戦が続く全国高校野球選手権大会は、17日の3回戦で昨夏の覇者仙台育英(宮城)、花巻東(岩手)が準々決勝進出を決め、八戸学院光星(青森)を含む東北勢3校が8強に入った。鶴岡市出身のライター田沢健一郎さん(47)=さいたま市=が今月、近年躍進する東北6県の高校球児や球界の成長と軌跡をたどる書籍を出版。本県の事例に今大会に出場した日大山形を取り上げ、打撃力の強化と攻撃スタイルの変化を特徴に挙げている。

 新著は「104度目の正直 甲子園優勝旗はいかにして白河の関を越えたか」。昨年の第104回大会で仙台育英が東北勢初の優勝を手にした。東北勢として春夏合わせて13度目の決勝挑戦で、悲願の「白河の関」越えを果たした。田沢さんは大会後に出版社から打診を受け、全国60人以上の高校野球関係者に取材したという。

 本書は全9章で構成し、1県ごとに一つのエピソードを盛り込んだ。青森県は「野球留学生」が与える地元への刺激を、福島県は学校の枠を超えた総合型クラブの取り組みなどを紹介している。

 本県は「東北の打撃力向上の象徴」として日大山形を取り上げた。章のタイトルは「強攻」。荒木準也監督、強豪校の礎を築いた渋谷良弥元監督、在籍した中心選手らへのインタビューを交え、県勢初となる夏8強を果たした第88回大会のワンシーンなどに焦点を当てた。甲子園の戦いにおいて犠打を絡めて得点を狙う形から、ファーストストライクを積極的に狙い打つスタイルへの変化に着目。全国レベルを想定した変化球への対応を重視したことで、攻撃力が向上した点などを成長に挙げた。

 仙台育英の須江航監督の指導哲学を紹介しているほか、高いレベルの指導者を輩出する東北福祉大の台頭、プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスの誕生もテーマの一つ。東北一体の球界として悲願を達成するまでの土台づくり、競い合って成長する姿に迫っている。

 自らの少年時代から始まる前書きでは、東北で育った元球児、取材者としての心情をしたためた。田沢さんは「初優勝の背景には、壁に何度もはね返されても挑戦し続けた東北6県の球児、指導者の努力や歩み、人のつながりがあったと知ってもらえたら、うれしい」と話している。

 たざわ・けんいちろう 鶴岡市出身。藤島中から鶴商学園高(現鶴岡東高)に進み、野球部に在籍。三塁コーチなどを務めた。大学卒業後、出版社勤務を経て2002年からフリーランスのライター、編集者に。現在は同市とさいたま市に拠点を置く。本書はKADOKAWA刊、1870円。他に自著「あと一歩!逃し続けた甲子園」。

東北勢の成長と軌跡を自著に記した田沢健一郎さん=鶴岡市

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