70歳超えても“重労働” 過渡期迎える佐世保の町内会活動 役員の負担軽減策など模索

地域住民から出された資源物を適正に仕分けする役員ら=佐世保市内(提供)

 長崎県佐世保市内の町内会(自治会)活動が曲がり角を迎えている。高齢化の影響で運営に携わる担い手が不足し、これまでと同じように活動を続けられないケースが出ている。役員の負担の重さを嘆く声もあり、市はデジタル化を進めるなど負担軽減策を模索している。
 市東部の花高4丁目1組自治会では昨年、川沿いの草刈りを担っていた任意組織が解散した。活動開始から15年。メンバーの多くが80歳を超え、1回当たり数時間にも及ぶ「重労働」を毎月2回続けるのが難しくなったのが理由だ。
 任意組織から引き継ぎを依頼され、自治会は検討しているが、自治会の加入者も高齢化している。同自治会の川添飛鳥会長(28)によると、加入者の約半数は70歳以上。宮崎省三前会長(52)は「草刈りを放置するわけにはいかないが、自治会としてもいつまでできるか…」とジレンマを口にする。

 市内には612の町内会があり(2022年度時点)、ここ10年間、ほぼ横ばいで推移。加入率は減少傾向ではあるが8割超を維持している。ただ、高齢者や共働き世帯、定年後も働く人が多く、担い手が不足。「役員をするなら町内会を抜ける」と言う人もおり、同じ人が役員を続けざるを得ない状況があるという。
 「暗黙の了解で80歳ぐらいまで役員を続けなければと思っている」。市東部地区で役員をする男性(71)はこう話す。前任者は傘寿を過ぎて退任した。仕事や介護を理由に役員を断る人は多く、この地域では40年以上役員を続ける人が複数いる。複数の担当を兼務する役員もおり、負担の偏りが大きい。
 問題の根本は、役員の負担の大きさだ。役員の仕事は、敬老会をはじめとしたイベントの準備や当日の運営、定期的に開催される役員会や班長会への出席、毎月の資源物の仕分け、広報誌の配布など多岐にわたる。行政から依頼される民生委員などの「委員」の選任もある。
 加えて、ある会長宅には「公園のトイレが汚れている」「空き家から水漏れしている」といった連絡も入る。別の会長(76)は「世話をするのは嫌いではないけれど、精神的にきつい面がある」と嘆く。
 市も課題は共有しており、役員の負担軽減策を探っている。役員が市役所に出向く手間を減らすため、補助金などの各種書類のオンライン申請を進める。来年からスマートフォンなどで閲覧できる電子回覧板の導入も計画する。
 各部署が町内会に依頼する事務の見直しや、町内会に直接意見を聞く機会も増やす考え。市コミュニティ・協働推進課は「どこを改善したら負担が減るのか、いい事例があれば提案していきたい」と話す。
 県立大地域創造学部の綱辰幸学部長(地方財政論)は、高齢化や行政の広域化が進む中、町内会が地域コミュニティーづくりに果たす役割は重要になってくるとし「災害など地域の課題について住民が情報を共有し、助け合う基盤となる」と意義を強調する。最も基礎的な組織である町内会の活動をどのように持続していくのか、町内会運営は過渡期を迎えている。


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