斜面崩落2年、見えぬ復旧 白山・鳥越、農家諦めムード

斜面の崩落地で行われている復旧工事。農地は土砂で覆われたままになっている=17日、白山市広瀬町(ドローンから)

 2021年5月に白山市鳥越地区の広瀬町で起きた高さ150メートル、幅50メートルにわたる斜面の崩落について、復旧の見通しが立っていないことが19日までに分かった。斜面にコンクリートの枠を造成し、モルタルを吹き付ける工事が進められているが、崩落が広範囲に及んでいるため時間を要している。斜面下の田畑には土砂が堆積し、耕作は2年以上も中断されたまま。地元農家には「いつまで待てばいいのか」と諦めムードも漂う。

 現地では21年5月20日、集中豪雨によって斜面が崩れた。最初の崩落以降も雨により土砂が流出。斜面の下に広がる農地0.56ヘクタールで耕作ができなくなり、現在は大型の土のうで囲って土砂を食い止めている。

 石川県は21年9月に復旧工事に着手した。現在は崩落した斜面の上部でのり枠工が進められている。ただ安全対策を十分に施す必要があり、「崩壊の規模が大きく、全体の復旧が完了する時期が見えない」(県担当者)という。

 一方、農地に堆積した土砂の搬出は白山市が担当することになっている。再び大雨により土砂が崩れる恐れもあるため、搬出は県の工事の進ちょくを見ながらの対応になるとみられる。

 農地が土砂に覆われた「やまだ農場」の山田稔代表(76)によると、21年5月の崩落では水田約0.3ヘクタールが被害に遭い、さらに昨年8月の豪雨によって、耕作できない水田の規模が広がったという。

  ●「作業中に落石」

 復旧工事が進まない中、被害の拡大を懸念する声もある。崩落現場近くの農家からは「農作業中に斜面の上から石が転がってきた」という声も聞かれる。山田さんは「天災で仕方のないことだが、復旧や災害対策は早くしてほしい」と表情を曇らせた。

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