<社説>日本が米軍PCB処分 米軍の責任で撤去させよ

 県内の米軍基地で使われていたポリ塩化ビフェニール(PCB)の廃棄物を防衛省が引き取り、国内で処分していたことが判明した。日本側が引き取り、処分する明確な根拠や基準は何もない。県に対する本紙の情報公開請求で明らかになった。 PCBは有害物質のため国内では処分が義務付けられており、在日米軍による保有や使用は違法状態にある。

 米軍のPCB保有は、国民の命や健康に関わる重大な問題である。それに加え、処分費として4年間で2200万円を要している。税金が使われているにもかかわらず日本政府が詳細を説明しないのは明らかにおかしい。そもそも日本が引き取るのは筋違いだ。日本政府は国の主権を懸けてでも米軍の責任で米本国へ撤去させるべきだ。

 PCBは1968年、食用米ぬか油に混入し、健康被害が広がったカネミ油症事件で毒性の強さが認知された。多くの先進国で70年代に生産が中止され、日本でも72年に製造が中止された。

 日本政府は2001年にPCB特別措置法を施行、全国5カ所にPCB処理施設を整備し処理を進めた。保有者は量と管理の状況を都道府県へ届けることになり、高濃度PCBは今年3月に処理期限を迎え、低濃度は27年までに処理しなければならない。

 日米は02年、在日米軍基地からのPCB汚染機器の撤去を含む環境問題への取り組み強化で合意した。それ以降、米軍はPCB廃棄物を米本国に持ち帰って処分し、日本政府は12年に国会で「順次、米本国へ搬出され、処理・廃棄をされてきている」と答弁していた。

 しかし今回、遅くとも19年度から国内で処分が行われ、未処理の保管量は数トン分にも及ぶことが分かった。キャンプ・シュワブやキャンプ瑞慶覧、普天間飛行場、トリイ通信施設でドラム缶などに入れて保管されている。

 県内では1996年に恩納村の米軍恩納通信所跡地で、2002年には米軍から引き継いだ航空自衛隊恩納分屯地でそれぞれ大量のPCB含有汚泥が見つかり、大問題となった。県民の命や健康が再び脅かされてはならない。

 西村明宏環境相は7月、PCB特措法について「米軍は尊重する義務を負っている」と述べたが、日本政府による処分の肩代わりは主権国家としてあまりにもずさんだ。

 背景には、図に乗る米軍を日本政府が甘やかすという構図がある。日米地位協定で温存された特権を盾に、国内法を守らない米軍の対応を日本政府が黙認する悪弊が繰り返されてきた。有機フッ素化合物PFASに関しても、米軍由来を特定し汚染原因を除去するまでに至っていない。

 治外法権を放置するこの状況は植民地そのものだ。自国の法を米国に守らせ責任を取らせることのできない日本政府に「法治国家」を語る資格はない。

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