田名部まつり 継承着実に/「乗子」コロナ前より増 山車組安堵

田名部まつりで山車を引く子どもたち。コロナ禍で若者のまつり離れが懸念されたが、今年は多くの子どもたちが参加した=19日、むつ市

 青森県むつ市で開催中の「田名部まつり」で、各山車組のはやしを演奏する「乗子(のりこ)」の子どもたちが、新型コロナウイルス禍前より増加している。各組は通常開催できなかった3年分の反動で、まつりに参加したいと思う子どもが増えたのではないか-と推測。コロナの影響で若い世代のまつり離れが懸念されたが、伝統のまつりへの思いは着実に受け継がれている。

 田名部まつりのはやしは、笛、太鼓、かねなどを使い、運行時や山車の向きを変える時、夜間のみ演奏するものなど複数ある。組によって、ご神体を迎える際に演奏するものなど独自のはやしもある。

 義勇(ぎゆう)組の乗子は小学5年生から高校3年生までの24人。コロナ禍前の10人前後から大幅に増加した。今年初めて乗子として参加した住吉禮弥さん(むつ工業高3年)は、友人が乗子だったことで興味を持ったという。「組の一員として参加してみると、山車に誇りを感じ、『観客にいいものを見せたい』という気持ちになった」と力を込めた。乗子は今年が最初で最後となるが、「来年も組の中でまつりに携わりたいと考えている」という。

 宮北健一組頭(40)は「(コロナ禍の)3年間、やっぱり子どもたちもまつりをやりたかったのだろう」と推し量る。「まつりから離れ、伝統が途切れてしまうことがかなり不安だったが、組の先輩などの支えもあってはやしを仕上げることができた」と安堵(あんど)した。

 明盛(みょうせい)組の乗子は中学生9人で、見習として小学4~6年生10人が参加している。成田達組頭(39)は「まつりや組の活動の楽しさを伝えることで、伝統を受け継いでくれる子どもたちの参加を増やしていきたい」と語った。

 一方、豪川(ごうせん)組は乗子だけでなくまつり全体で子どもの参加を促そうと、今年から新たに、乗子や山車の引き手の衣装「ダボシャツ」など子ども用のまつり用品をリユースする取り組みを始めた。使わなくなったまつり用品を組が譲り受け、必要としている人に千円程度で販売するものだ。

 熊谷秀策組頭(37)によると、組オリジナルのデザインの衣装などを作って販売しているが、材料などの高騰により価格が年々高くなっているという。熊谷組頭は「山車の運行には子どもたちの活気がとても大事。この取り組みによって、子どもたちのまつり参加の可能性を少しでも広げられたらと思う」と話した。

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