滝ノ上温泉、2施設復活 雫石、環境と自然エネルギー調和形に

地熱バイナリー発電所を併設し、10年かけて滝峡荘を再興した岩岡重樹さん

 登山客や秘湯愛好家に親しまれる雫石町の滝ノ上温泉は今夏、10年ぶりに2施設で復活を果たした。度重なる自然災害や建物の老朽化で一時は全ての宿泊施設が休業していたが、2019年に「滝観荘(りゅうかんそう)」がゲストハウスとして再開し、対岸の「滝峡荘(りゅうきょうそう)」が地熱バイナリー発電所を併設する新たな形で生まれ変わった。13年に2施設の経営を引き継いだ岩岡重樹代表(69)は「構想から10年。自然環境と自然エネルギーが調和した温泉を具現化できた」と万感の思いに浸る。

 ゴォーという蒸気の音と対照的に、葛根田川の穏やかなせせらぎも聞こえる滝峡荘。木造の建物に入ると、川を望める窓から、木々の緑とともに陽光が差し込む空間が出迎える。

 東京都杉並区から訪れた河村富次さん(83)は「23年前、妻との山登りで立ち寄った。ひなびた趣ある雰囲気が懐かしい。思い出の温泉が再開してうれしい」と目を細めた。

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