家康の国造り「今の日本を考える上でも大切」 作家の安部龍太郎さんが解き明かす

家康の政治理念について語る安部さん(21日、京都市上京区のホテル)

 京都政経文化懇話会の8月例会が21日、京都市上京区のホテルで開かれ、作家の安部龍太郎さんが「家康の国造り」と題し、その国家観を国際的な視点を交えて解き明かした。

 安部さんはまず戦国時代の特徴を「日本がヨーロッパ世界と出会ったこと」と捉え、鉄砲の伝来、キリスト教の布教、南蛮貿易が「三位一体」となって、ポルトガルやスペインによる植民地獲得を支えていた時代背景を説明する。

 そうした危機に「信長、秀吉、家康の3英傑は、どう対処するかが問われていた」と続け、3人の違いを探っていった。

 植民地化を免れるために天下統一を急いだ信長は朝廷の上に立って国を造り替えようとし、秀吉は朝廷をコントロールして時代に対処した。こう分析した上で「家康は天皇から任命された征夷大将軍として幕府を開き、安定政権を目指した」と解説した。

 さらに家康は「格差を生み出す重商主義を否定し、農業と地方分権に基礎を置く政策へと転換させ、260年持続する政権を築いた」とし、「その理念は今の日本を考える上でも大切ではないか」と結んだ。

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