映画「春に散る」25日から大分、中津で上映 瀬々監督にインタビュー【大分県】

ボクシングを通して人生を描いた「春に散る」(ⓒ2023映画「春に散る」製作委員会)
大分市木上で撮影された場面。兄の葬儀で帰郷した仁一(佐藤浩市・左)と姪の佳菜子(橋本環奈)(ⓒ2023映画「春に散る」製作委員会)
沢木耕太郎の名作に挑んだ瀬々敬久監督

 豊後高田市出身の瀬々敬久監督がメガホンを取り、大分市がロケ地となった映画「春に散る」が25日から、大分市のTOHOシネマズ2館、T・ジョイパークプレイス大分、中津市のセントラルシネマ三光で上映される。主役は佐藤浩市と横浜流星で世代も考え方も違う人間同士が、もがきながら唯一無二の関係を築いていく姿を描いた。瀬々監督に作品への思いを聞いた。

 ―大分市でのロケについては。

 「まだコロナ禍だったが地元の方が多大な協力をしてくれ、ありがたかった。知っている場所が出ると無条件に盛り上がる。活性化につながってくれればうれしい」

 ―ボクシングに以前から興味があった。

 「ボクシングもだが、若い頃に読んで影響を受けていた沢木さんが原作であることに一番引かれた」

 ―佐藤浩市と横浜流星の演技はどう感じた。

 「仁一には限られた時間しかなく、そこで何をするかという話。浩市さんらしい切り取り方をしてくれ、普段は感情を秘め、ひねくれているが実はそうでもなく熱い、という部分をうまく出してくれた。横浜君は、役を自分に引き寄せ、等身大の演技をしてくれた。できそうでなかなかできない」

 ―ファイティングシーンの迫力は圧巻。

 「(出演、ボクシング指導・監修をした)松浦慎一郎君の存在が大きかった。戦い方にそれぞれの個性も出るように考えてくれた」

 ―見どころは。

 「ボクシング映画だが、そこにあるのは、若さと老いの対峙(たいじ)であり、家族を喪失した者が疑似家族を形成していく面もある。試合を見ている観客の人生の話でもあるとも考えている。登場人物それぞれが、もう一度生き方を探していくという物語で、見ることで何かを感じとってくれたら」

■大分市や由布市などでロケ

 作品中、大分市は広岡仁一の故郷として位置づけられている。ロケは同市ロケーションオフィスが誘致し、昨年11月に実現した。仁一が亡くなった兄を弔問するシーンは稙田地区の木上、佳菜子が東京へ旅立つ場面は、佐賀関地区の権現通り商店街などが登場。由布市挾間町でも撮影があった。

 【ストーリー】元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)は引退を決めた米国で事業を興し、成功したが不完全燃焼の心を抱え突然帰国する。そして所属していたジムの後を継いだ真田令子(山口智子)や、すっかり落ちぶれたかつての仲間、佐瀬健三(片岡鶴太郎)らと再会。そこに不公平な判定に怒り一度はボクシングをやめた黒木翔吾(横浜流星)が現れ、指導を受けたいと懇願する。広岡の姪の佳菜子(橋本環奈)も加わって不思議な共同生活が始まり、2人の新たな闘いが始まる。原作は沢木耕太郎の同名小説。

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