「屋根のない博物館」古都・慶州、新羅期の栄華や仏教芸術今に 韓流散歩~福井新聞紙記者が行く釜山、慶州

大陵苑地区の古墳公園。約12万5400坪の広大な敷地に王族や貴族の墓23基が並ぶ

 大ヒットを記録したテレビドラマ「冬のソナタ」から20年。動画配信サービスでは韓国ドラマが再び人気を集め、日常生活には食やコスメなど「韓流」がより身近なものになっている。韓国観光公社が主催するメディア向けツアーに参加し、韓国第2の都市・釜山(プサン)と、国内で最も多くの世界遺産を有する古都・慶州(キョンジュ)を訪れた。お勧めの観光スポットやご当地グルメを3回にわたり紹介する。(取材協力・韓国観光公社) 

 ■修学旅行先で“必須”

 新羅の首都として千年の歴史を誇る古都・慶州市。釜山広域市からは北へ車で1時間ほど。市内には古墳が点在し、数多くの歴史的建造物や王朝の栄華をしのばせる遺跡がある。「屋根のない博物館」と言われるゆえんだ。

 韓国には13の世界文化遺産があり、そのうち慶州には寺や歴史遺跡地区など4つが存在する。現地ガイドによると国内の修学旅行先としては“必須”のエリアで、日本で言うところの「京都」らしい。

 ■俗世と浄土結ぶ橋

 仏国寺(プルグクサ)は、統一新羅時代751年に建てられた韓国を代表する仏教寺院で、多宝塔や釈迦塔など7つの国宝を有している。1995年に世界文化遺産に指定された。

 門をくぐり境内に入ると石階段があり、観光客がその前で記念写真を撮っていた。明らかに階段だが「青雲橋(チョンウンギョ)」「白雲橋(ペグンギョ)」「蓮華橋(ヨンファギョ)」「七宝橋(チルボギョ)」と橋の名前がついた国宝だ。俗世と浄土を結ぶ橋の役割を担っているという。見上げると立ち入り禁止の橋の上に人がいる。どこから登ればよいのか一瞬“往生”したが、もちろんすぐそばに順路があり、無事“浄土”にたどり着けた。

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 実はこの寺は、触ると幸運を呼ぶといわれる「金の豚」でも有名で、記者もひとなで。豚というよりはむしろイノシシだった。

 ■誰の古墳?

 「ハナ、トゥル、セッ!」(韓国語で「1、2、3」写真を撮るときの掛け声)

 鮮やかな芝生に覆われた古墳の立地を利用してつくられた“映え”スポット。古墳に囲まれたモクレンの木の下で多くの韓国の若者らが列をなし、さまざまなポーズで撮影していた。

 慶州市中心部の大陵苑(テヌンウォン)地区にある古墳公園には、統一新羅時代の王族や貴族の墓23基が密集している。韓国の古墳はこんもりとした小さな丘といった感じ。その多くが誰の古墳なのか謎に包まれているという。

 唯一整備され内部公開している「天馬塚(チョンマチョン)」を訪れた。天馬を描いた馬の泥よけが出土したことに由来するこの古墳は高さ12.7メートル、直径50メートル。内部には金冠や腕輪などが展示されていたが、これらはレプリカで実物は慶州国立博物館にあるという。

 ■飛び石から狙う

 慶州はナイトスポットも風流だ。水面に映える幻想的な「月精橋(ウォルジョンギョ)」。統一新羅時代の橋で、遺構を元に2018年、長さ66.15メートル幅13メートルの国内最大規模の木造橋として復元された。川にある飛び石から多くの人とすれ違う中、写真を狙う。足元が不安定で、「良い写真が撮れないかも」より「落ちるかも」という思いの方が強かった。

 屋根のない博物館の魅力は堪能したが、日中は日差しが強く帽子も被っていなかったので、少しでも“屋根”を求める自分がいた。

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